雪の壁が、木々を飲み込み私に迫りくる…ー。
◯◯「カルト……さ…一! !」
声が震えて、彼の名前を上手く呼べない。
先ほど弾がかすった腕が、痛みを訴えている。
(止めないと…… ! )
必死にカルトさんへ手を伸ばした。
◯◯「カルトさん…… !」
押し寄せる雪の轟音の中、彼の名前を必死に叫ぶ。
その時…ー。
カルト「◯◯……」
カルトさんが苦しげな表情を浮かべながら、私の手を握り返した。
カルト「……っ!」
彼が空いている方の手を、雪崩に向けて振り上げると……
(雪が……)
迫りくる雪が、力をなくしたように雪原の中に消えていく。
◯◯「よかった……」
気が緩んで、足に力が入らなくなり、そのままカルトさんの胸にもたれかかってしまう。
カルト「◯◯……」
カルトさんは戸惑ったように、壊れ物を扱うように優しく、私の腰をそっと支えてくれた。
◯◯「カルトさんが、無事でよかった」
カルトさんの瞳が驚いたように見開かれる。
カルト「腕……」
◯◯「へ、平気です。かすっただけ…ー」
まだジンジンとする痛みをこらえて、私は笑みをつくる。
でも……
カルト「許せない……許せない……」
独り言のようにつぶやかれるその低い声色に、背筋が凍る感覚を覚える。
◯◯「カルト……さん……?」
そして、彼は私を抱きしめた。
カルト「帰ろう……」
(どうしたんだろう、様子が……?)
抱きしめられているはずなのに、
カルトさんの腕も、体も……すべてがとても冷たいと感じた…ー。