雪の壁が、木々を飲み込み私に迫りくる。
◯◯「カルト……さ…ー」
声が震えて、上手く彼の名前を呼べない。
(止めないと……)
必死にカルトさんへ手を伸ばした。
けれど、それを遮るように雪が私を飲み込んだ。
…
……
(音がしない……)
目を開けると、真っ白な雪の壁が見えた。
(体が重い……息が苦しい……)
覆う雪が、私の体を芯まで冷たく凍らせていく。
(私……雪に飲まれて……)
(カルトさんは……大丈夫だったかな)
雪に飲まれる前に見た、彼の姿を思い出す。
(頭が……)
意識が朦朧とし始めた、その時…ー。
目の前の雪が、もぞもぞと揺れた。
(何……?)
小さな顔が雪の中から現れて、長い耳を立てた。
◯◯「雪……ウサギ?」
(このウサギは……本物? それとも……)
けれど眠気が押し寄せて、私は重くなっていくまぶたをゆっくりと閉じた。
…
……
カルト「ごめんね……」
遠くなっていく意識の向こうで、カルトさんの声が聞こえた気がした…ー。