第1話 雪の城

精霊の国・セクンダティ ニエベ、白の月…ー。

粉雪が空を舞うある日…ー。

カルトさんにご招待いただき、私は氷の一族が住まうニエベを訪れた。

(綺麗……)

見渡す野山も街も、雪に覆われ白に染まっている。

道沿いに並ぶ樹氷が、雲間からこぼれる光に淡く輝く。

◯◯「綺麗ですね」

カルト「冷たいし……人を傷つけることも、ある……から……」

◯◯「そう……ですか……?」

(人を傷つける……?)

(こんなに綺麗なのに、傷つけるってどういうことだろう……)

考えながら歩いていると…ー。

ふと、目の端で何かが動いたような気がした。

(何……?)

庭の方に目をこらすと、雪の中で何かが跳ねる。

長い耳が一瞬見えた気がした。

(あれって、もしかしてうさぎ……?)

カルト「……何かあった?」

◯◯「あ…… !」

真剣に見ていた私の手に、カルトさんの指が触れた。

その冷たさに、思わず手を離してしまう。

カルト「冷たい……よね……」

私を見つめるカルトさんの瞳が、少し悲しそうに陰る。

◯◯「すみません……驚いただけで。 冷たくて気持ちいいです」

カルト「そう……」

カルトさんが自分の手のひらを見下ろす。

その時、少しだけ彼が笑った気がした…ー。

 

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