精霊の国・セクンダティ ニエベ、白の月…ー。
粉雪が空を舞うある日…ー。
カルトさんにご招待いただき、私は氷の一族が住まうニエベを訪れた。
(綺麗……)
見渡す野山も街も、雪に覆われ白に染まっている。
道沿いに並ぶ樹氷が、雲間からこぼれる光に淡く輝く。
◯◯「綺麗ですね」
カルト「冷たいし……人を傷つけることも、ある……から……」
◯◯「そう……ですか……?」
(人を傷つける……?)
(こんなに綺麗なのに、傷つけるってどういうことだろう……)
考えながら歩いていると…ー。
ふと、目の端で何かが動いたような気がした。
(何……?)
庭の方に目をこらすと、雪の中で何かが跳ねる。
長い耳が一瞬見えた気がした。
(あれって、もしかしてうさぎ……?)
カルト「……何かあった?」
◯◯「あ…… !」
真剣に見ていた私の手に、カルトさんの指が触れた。
その冷たさに、思わず手を離してしまう。
カルト「冷たい……よね……」
私を見つめるカルトさんの瞳が、少し悲しそうに陰る。
◯◯「すみません……驚いただけで。 冷たくて気持ちいいです」
カルト「そう……」
カルトさんが自分の手のひらを見下ろす。
その時、少しだけ彼が笑った気がした…ー。