楓さんと山に行った、数日後…―。
見上げている天井が揺れているように見える。
(熱のせいかな……)
山から戻るなり熱を出して寝込んでしまった私は、布団の中から出られずにいた。
楓「○○」
襖の向こうから、楓さんの声が聞こえる。
○○「はい」
静かに襖が開き、楓さんの顔が覗いた。
楓「どう?」
○○「すみません、まだ熱が下がっていないみたいで」
楓「そう……無理やり山に連れて行って、悪かったね」
○○「いえ。無理やりなんて……私も楽しかったので、気にしないでください。 それに、こうして寝ていればすぐに治ると思い…―」
楓「でもよかった。じゃあまだここにいるってことか」
○○「え……?」
楓さんがいたずらっぽい笑みを浮かべる。
(どういうこと……?)
楓さんを見つめると、彼は笑顔のまま私を見つめ返す。
私は返事に困り、楓さんにつられて薄い笑みを浮かべた…―。