四季の国・蓬莱 凪の月…―。
楓さんに呼び出された私は、春の暖かさを感じながら彼の城へと向かっていた。
(ここに来るのも久しぶりだな……)
美しい街並みを抜けた後、城にやって来た私は楓さんの部屋へと向かう。
すると、その時…―。
??「君も強情だねぇ」
楓さんが誰かと会話をしながら、こちらへ歩いてくるのが見えた。
後ろを歩く男性は、腰をかがめて何度も頭を下げている。
楓「何度頼まれても、桜の絵は出展しないよ」
(桜の絵?)
男性「そこをなんとか……」
楓「だから……あ、○○」
楓さんと目が合い、私は慌てて会釈をする。
楓「俺はこれから大切な約束があるから。じゃあ、後はよろしく」
楓さんは従者の方にそう言い残すと、私の元へ歩み寄る。
○○「あ、あの……」
楓「さあ、行こうか」
楓さんは耳元で囁くと、私の手を引き足早に歩き出した。
趣のある家屋が続く街を、楓さんと歩く。
すると、足早に歩いていた楓さんは後ろを振り返り、ようやく立ち止まった。
楓「ここまで来れば大丈夫かな」
○○「何かあったんですか?」
楓「春の宴に、桜の屏風絵を是非出展してくれって頼まれて」
○○「桜の屛風絵なんて、素敵ですね。 あれ? でも、出展しないって言っていたような……」
楓「そう。だから、君が来てくれて助かったよ。 さっきの男は画商なんだけど……断っても断っても、しつこく食い下がられてしまってね」
楓さんはそう言って私を覗き込み、にっこりと笑ったのだった…―。