第1話 桜の絵

四季の国・蓬莱 凪の月…―。

楓さんに呼び出された私は、春の暖かさを感じながら彼の城へと向かっていた。

(ここに来るのも久しぶりだな……)

美しい街並みを抜けた後、城にやって来た私は楓さんの部屋へと向かう。

すると、その時…―。

??「君も強情だねぇ」

楓さんが誰かと会話をしながら、こちらへ歩いてくるのが見えた。

後ろを歩く男性は、腰をかがめて何度も頭を下げている。

楓「何度頼まれても、桜の絵は出展しないよ」

(桜の絵?)

男性「そこをなんとか……」

楓「だから……あ、○○」

楓さんと目が合い、私は慌てて会釈をする。

楓「俺はこれから大切な約束があるから。じゃあ、後はよろしく」

楓さんは従者の方にそう言い残すと、私の元へ歩み寄る。

○○「あ、あの……」

楓「さあ、行こうか」

楓さんは耳元で囁くと、私の手を引き足早に歩き出した。

趣のある家屋が続く街を、楓さんと歩く。

すると、足早に歩いていた楓さんは後ろを振り返り、ようやく立ち止まった。

楓「ここまで来れば大丈夫かな」

○○「何かあったんですか?」

楓「春の宴に、桜の屏風絵を是非出展してくれって頼まれて」

○○「桜の屛風絵なんて、素敵ですね。 あれ? でも、出展しないって言っていたような……」

楓「そう。だから、君が来てくれて助かったよ。 さっきの男は画商なんだけど……断っても断っても、しつこく食い下がられてしまってね」

楓さんはそう言って私を覗き込み、にっこりと笑ったのだった…―。

 

 

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