月SS 手と手を絡めて

○○の指先に、丁寧にネイルを塗り終わった後…―。

彼女の綺麗な指先を彩る水色をじっと見つめる。

アルマリ「本当に、綺麗な指……」

ため息を吐くようにつぶやいてから、もう一回……

引き寄せられるように、○○の指にキスをした。

(なんだか恥ずかしいけど嬉しい……)

(心の奥がくすぐったくて、トルマリと一緒にいる時と違ってて……)

胸をいっぱいにするのは、言葉にできない不思議な気持ちで……

伝えたいのに伝えられないもどかしさに、僕はまたキスを落とすことしかできなかった。

○○「ん……アルマリ。くすぐったいよ」

静かで控えめな○○の声が聞こえる。

僕が顔を上げると、その頬は桃色に染まっていた。

アルマリ「ごめん……でも、好きなんだ。君の手」

○○「っ……う、うん」

そう伝えれば、○○の頬がさらに赤くなる。

アルマリ「○○、恥ずかしいの? 好きって言われるの、嫌い?」

ふと小さな不安が胸に過ぎり、その気持ちのままに問いかけた。

乾きかけたネイルには、触れたいけどまだ触れられない……

○○「あ、あの……恥ずかしいけど、嫌いじゃないよ。 ただ……」

アルマリ「え……?」

恥ずかしそうに視線を逸らす○○が、とてもかわいくて……

アルマリ「なんでこんなに惹かれているんだろう……」

(トルマリもかわいいって思うけど、○○も綺麗でかわいい)

(もっともっと、おもてなししたり、綺麗にしたりしてあげたくなるみたい……)

アルマリ「手、繋ぎたいな」

○○「え……?」

アルマリ「あ、でも繋いだら、まだネイルが取れちゃうよね……」

(この手を繋いで、綺麗になった君と一緒に何かをしたい)

(何か……? 何かって、なんだろう?)

(ぎゅってして近づいて……)

ぐるぐると、考えを巡らせていると……

○○「アルマリ……じゃあ、こうする……?」

そっと目を伏せた○○が、僕の指の間に一本一本、指をゆっくりと絡めた。

アルマリ「……○○?」

ぴったりと手のひらがくっついて、指も一本ずつ絡まって……

アルマリ「……っ」

絡めた手をぎゅっと握り合うと、どきんと大きく心臓が跳ねるのがわかった。

(僕の心臓、今……すごく速い)

しっかりと繋がれた手から、お互いの熱が伝わり合う。

(そうだ。僕もっともっと君と、くっつきたい……)

そう思うと止まらなくて…―。

○○「あ……っ」

もう片方の手を○○の腰に回し、ぐっと彼女の体を引き寄せた。

アルマリ「ん……っ」

唇を少し強引に押し当てる。

柔らかくて温かな感触に、ぎゅっと胸が苦しくなった。

(なんなのかな……この痛くてあったかい気持ち……)

その感情の正体が知りたくて、僕はまた自分の唇を彼女の唇に押し当てる。

○○「アルマリ……!」

アルマリ「あ……」

慌てて唇を離してみると、○○の顔は真っ赤で、ひどく焦っている様子で……

(僕、変かな……)

恥じらう○○が、たまらなくかわいくて……

アルマリ「ねぇ君も、僕みたいに心臓の音、速くなってる?」

○○「え……?」

僕の問いかけに戸惑う○○を、ぎゅっと抱きしめた。

○○は一瞬小さく震えたけれど、僕から離れようとはしなかった。

(嫌がってない……?)

体と体が触れ合って、ドキドキと鼓動が速まって……

(あれ、でもこの音……)

静かに抱きしめながら、○○の心臓の音を感じ取る。

(やっぱり、○○の鼓動だ……)

(僕と一緒……すごく速い)

そう感じると、途端に安心して温かな気持ちになった。

アルマリ「ねえ、○○……。 もし嫌じゃなかったら、あと少しだけ……こうしててもいい?」

尋ねると、 ○○の体の力がゆっくりと抜けた。

○○「うん……嫌じゃないよ」

その言葉の後、優しく包み込むように、僕の体が抱きしめられる。

(幸せだな……)

トクントクンと、さっきよりも穏やかな音が響き合う……

その幸せな音色をいつまでも聴いていたいと思いながら、僕はそっと瞳を閉じた…―。

 

おわり。

 

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