ガラスの靴を履いた○○が、目の前で幸せそうに微笑んでいる。
感激してくれているのか、宝石のように瞳を輝かせる彼女を見て、僕はとても嬉しくなった。
○○「ありがとう、アルマリ……」
アルマリ「どういたしまして。このまま少し星空の下を歩いてみる?」
すると○○が、ふわりと柔らかく笑った。
ガラスの靴を履いた彼女は、魔法がかかったみたいにきらきらと輝いていた。
アルマリ「気をつけてね」
○○の手を取って、そっと立たせてあげる。
静かに立ち上がった彼女は、ガラスの靴の感触を確かめるように少し足を動かした。
○○「不思議……。 ぴったりだし、まるで私の足じゃないみたいにきらきらしてる……」
靴を見下ろした○○は、感嘆のため息を漏らしながら、そうつぶやいた。
アルマリ「君の足のサイズはわかってたんだ。だからぴったりのを用意できたよ」
○○「っ……どうして知ってたの?」
アルマリ「ふふっ、トルマリのお洒落にいつも付き合ってるから。 僕、そういうのはわかるんだ」
○○の少し驚いた顔が、小さな女の子みたいで……
(……かわいいな)
(僕の気持ち、届いてるかな? 喜んでくれてるかな?)
アルマリ「ねえ、バルコニーの傍まで歩いて、景色を見ようよ。 そうしながら、食前の飲み物を飲もう?」
○○「うん……!」
慎重に手を引いて、バルコニーの柵まで促す。
カツン、とガラスの靴がバルコニーの床に当たる音がした。
(綺麗で透明な音……君の出す音……)
アルマリ「ふふっ……」
○○「どうしたの?」
急に笑った僕を、○○が不思議そうに見る。
アルマリ「ガラスの靴の音、もっと聞かせて。 足が痛くなければ、一緒に踊ろうよ」
○○「え……?」
そう誘いかけて、さっとまた右手を上げる。
すると……
○○「っ……!」
優しく流れ始めた音楽に、○○が驚いて振り返った。
室内では、オーケストラの生演奏が始まっている。
○○「これも、アルマリが準備を……?」
アルマリ「うん、そうだよ。 ガラスの靴を履いた、僕のお姫様と……踊りたかったんだ。 ……君の綺麗な音を、もっと聞かせて?」
すっと片手を腰に回して、最初のステップを踏む。
○○「あ……」
つられるように、○○も踊り始めた。
夜空の下、二人だけの舞踏会にガラスの靴の音が心地よく響く。
アルマリ「どう?」
○○「なんだか、夢みたい……。 本当に、おとぎ話みたいで……」
アルマリ「夢じゃないよ」
顔を上げた○○と、間近で視線が重なった。
(僕……ドキドキしてる……)
彼女のガラスの靴が鳴る度に、胸の奥から、言葉にできない感情が込み上げてくる。
○○「ありがとう、アルマリ……私、すごく幸せだよ」
○○の笑顔は、そんな僕の心を明るく照らしてくれて…―。
アルマリ「どういたしまして……僕のお姫様」
○○「うん……私の、王子様……」
恥ずかしそうにそう言う○○が、かわいらしい。
静かにダンスを続けて、やがて一曲踊り終えると……
アルマリ「あ、忘れてた」
○○「え……?」
アルマリ「だって、飲み物を飲んで少しおしゃべりしようって計画だったのに。 君の靴音がとっても綺麗で、先にダンスをしちゃったんだ」
そう伝えると、○○の瞳が少し大きく丸くなる。
それから、にっこりと微笑んだ。
○○「これからゆっくり、食事できるよ。 アルマリ、本当に素敵な時間をありがとう」
アルマリ「○○……」
○○の幸せそうな笑みが、今度は僕の胸を騒がしくさせる。
(君といると、僕の心は忙しくなってばかりだよ)
けれど一つだけ、どんな時も変わらない気持ちは…―。
アルマリ「君が好きだから。君の笑った顔が好きだから……。 喜んでもらえてよかった」
彼女の手を取り、キスを落とす。
夜空では無数の星達が、僕達に拍手を贈ってくれているように、きらきらと瞬いていた…―。
おわり