レストランのメニューブックに記されていたのは、たくさんの『おもてなし』のプランだった。
ウェイター「あの方達は、今日が何かの記念日というわけではありませんが……。 当レストランでは、さまざまなおもてなしプランをご用意しております。 いつもと違う素敵な時間を、というのが、コンセプトとなっておりますので」
アルマリ「そうだったんだ……」
感心するように言ってアルマリは手渡されたメニューを覗く。
○○「どんなサービスが書かれてるの?」
アルマリ「なんかいっぱいあるみたい。 ○○も見てみる?」
アルマリは私にも見やすいようテーブルの上にメニューを開いてくれる。
ウェイター「はい。先ほどのものはこちらの女性にプレゼントを渡したい男性に利用していただけるプランです」
○○「そうだったんですか」
アルマリ「……」
アルマリは、メニューを見たまままばたきを繰り返している。
○○「アルマリ?」
アルマリ「何? どうしたの?」
○○「何か考え事でもしてるのかと思って」
アルマリ「うん。いつもと違う過ごし方って……」
彼は天使のような瞳を曇らせ、首を傾げる。
アルマリ「そうか……」
彼の瞳が、先ほどの花束をプレゼントされていた女性に向けられた。
(どうしたのかな?)
○○「アルマリ、それよりもそろそろ食べないとお料理冷めるよ?」
アルマリ「……そうだったね。せっかくおいしそうなのに冷めたらもったいないね」
彼は取り繕うような笑顔を作って、目の前に並んだお皿にフォークを伸ばす。
(やっぱり少し様子がおかしいような……)
気にはなったものの尋ねることはできないまま、私達はその日は別れてしまったのだった…―。