翌日…―。
アルマリに誘われ、二人で街に出かけることにしたけれど…―。
アルマリ「○○、見て。あの店、綺麗な石がいっぱい」
○○「あ……本当、綺麗だね!」
アルマリ「……見に行ってもいい?」
ぐっと近い距離で私の顔を覗き込んだアルマリの瞳は、きらきらと輝いていた。
○○「もちろんだよ!」
彼に手を引かれ、店へと入ってみると……
アルマリ「ほら、僕の国の宝石みたい……きらきらしてる」
○○「すごいね……」
そこにはさまざまな置物に混ざり、小さなラインストーンで作られた青いブローチが飾ってあった。
空の色をしたような青は、さっき見たアルマリの瞳の輝きにも似てる。
○○「ガラスかな? それとも宝石?」
アルマリ「わからないけど、すごく綺麗だね」
二人してガラス窓を覗き込んでは、あれが綺麗これが素敵と話が弾む。
そんな中、アルマリが私の顔を見てふと微笑んだ。
アルマリ「なんだか君とこうして過ごす時間って、のんびりできていいね?」
吐息がかかるくらい近くで、そっと私の耳元で囁かれた彼の言葉に…―。
○○「うん……私もアルマリと同じ気持ち」
甘い囁きに誘われるように、小さく頷くと……
アルマリ「……嬉しい」
アルマリは微笑んで、私の手を握ってくる。
○○「……」
アルマリ「……」
言葉のいらない穏やかな時間が私達の間に流れる。
(見つめられると少しだけ恥ずかしいけれど……)
(でも、アルマリと一緒だと、なんだか落ち着く)
アルマリ「ねえ、○○。今度は向こうの方に行ってみよう? さっき、大通りの方に素敵な花屋があったから」
○○「花? 見てみたい」
窓を離れれば、またアルマリの手が自然と私の手に重なる。
温かくて柔らかい、私より少し大きいアルマリの手……
アルマリ「○○、こっち」
○○「うん……!」
彼がくれる穏やかな時間が、私の胸を温かくしてくれた…―。
…
……
こうして日々を過ごしていたある日のことだった。
二人で向き合ってホテルのレストランで食事を取っていると……
○○「!?」
急に照明が落とされて、どこかから華やかな音楽が流れてきた。
(なんだろう?)
アルマリ「あ……見て、○○」
アルマリの視線をたどると、その先には……
○○「あ……」
その先で花火を挿したデコレーションケーキを手にしたウェイターさんが、あるテーブルの若いカップルの前で立ち止まった。
ウェイター「特別な日に特別な思い出を。こちらは目の前の男性からのプレゼントでございます」
男性「日頃の感謝を込めてね。さあこの花束を受け取ってくれ」
女性「まぁ……ありがとう」
女性は男性から嬉しそうに両手いっぱいの花束を受け取る。
○○「いいな、ああいうの……」
アルマリ「……」
なんとなく言葉を漏らすと、アルマリが私の顔を見る。
その時…―。
レストランの照明が戻り、アルマリは近くにいたウェイターさんに声をかけた。
アルマリ「今のは記念日か何かなの?」
ウェイター「はい。今のはですね……お客様、少々お待ちくださいませー-」
背の高いウェイターさんは一度その場を離れ、革製のメニューブックを持ってこちらへ戻ってきた。
そこに記されていたのは、さまざまな『おもてなし』のメニューだった…―。