記録の国・レコルド 凪の月…―。
重厚な石造りのホテルのロビーに、来賓客が居並ぶ。
プリンスアワードのアフターパーティが終わり、緊張から離れほっと息を吐いた時だった。
??「あれ? ○○?」
○○「……え?」
澄んだ音色に名前を呼ばれて顔を上げると……
○○「アルマリ? アルマリも来てたの?」
柔らかな金髪をふわりと揺らし、宝石のようにきらきらと瞳を輝かせるアルマリの姿があった。
アルマリ「うん。嬉しいな、君とこうして再会できて」
○○「……っ」
すぐに彼はぐっと私に近づいて、顔を至近距離から覗き込んできた。
(わっ……!)
アルマリ「あっ、ごめんね。 こんなに近づいちゃ……いけないんだった」
とくんと心臓を跳ねさせて目を大きくした私を見て、アルマリはふわりと笑って少しだけ距離を取る。
アルマリ「しばらく、トルマリ以外の人と会ってなかったから……ごめんね」
トルマリというのは、アルマリの双子のお兄さんのことで……
あまり人と接しないアルマリにとっては、トルマリさんとのこの距離感が普通の感覚だった。
アルマリ「……○○もびっくりした?」
○○「大丈夫。緊張してたからアルマリの顔を見てほっとして……」
アルマリ「……僕も。一緒だね」
○○「……っ」
嬉しそうに微笑んだアルマリが再び私に近づく。
その青く輝く瞳が私を映して、つい心臓が高鳴ってしまう。
(か、顔が……近い!)
アルマリ「あっ……ごめん、僕また近づき過ぎた……。 大丈夫?」
○○「うん」
慌てて頷けば、また朗らかな笑みが彼の唇に浮かぶ。
アルマリ「ねえ、○○」
ふわりと、アルマリがごく自然に私との距離を詰める。
(また……)
そう思うのに、不思議と何も言うことができない。
アルマリ「よかったら……僕と一緒に過ごさない?」
(アルマリと……?)
少し恥ずかしそうに言うアルマリに、私は小さく首を縦に振った…―。