井戸に入れられた毒を解毒するため、煌牙様は加持祈祷を行うことになった。
みそぎのために湯殿へ向かうという煌牙様と廊下を歩きながら、話を聞かせてもらう。
○○「不思議だったんですが……」
煌牙「ん? どうしたのじゃ」
○○「はい。伊呂具一の井戸ともなれば近づくことも容易ではないと思うのに、どうやって毒を入れることができたんですか?」
煌牙「うむ。捕らえたあの男達も、術者だからの」
○○「……!」
煌牙「呪術によって、井戸に呪いをかけたのじゃ」
○○「そんな……」
煌牙「……この国の薬を悪用しようとする輩じゃ。昔からどうしても、そのような奴らが後を絶たん」
○○「それに確かに、呪いでは私には何のお手伝いもできないですね……」
煌牙「そう塞ぎ込むでない。わしは、おぬしの気持ちだけで十分じゃ」
明るい煌牙様の声に隣を見ると、屈託なく微笑むその表情が目に飛び込んできた。
(不思議……この笑みだけで、少し心が穏やかになる)
煌牙「ほれ、それよりも、あんこのたくさん入ったおやつを待っておるからの! 良いか?あんこは、つぶあんじゃぞ!」
○○
「はい、わかりました」
あまりに無邪気に頼まれ、さらに心は明るくなっていく。
その後、湯殿の前で煌牙様と別れる時にも彼は可愛らしい手を振ってくれた。
…
……
その後私は、煌牙様に差し入れすべく、おはぎを作ることにした。
炊事場へ向かうと、煌牙様におはぎを作りたいのだとお願いしてみる。
すると……
料理人「ああ、もちろんいいですよ。煌牙様、喜ばれますね」
○○「ありがとうございます……!」
快く承諾してくれた料理人の方に、甘えついでのようにおはぎの作り方を教わった。
(初めて作るから、炊事場の方にも迷惑をかけるかもしれないけど……できる限り頑張ろう)
そうしてでき上がったおはぎは、少しだけいびつだけれど、満足のいく味になったのだった…―。