破られかけた結界へ向かうため、煌牙様と共に市街地を抜け、深い森の中を進んでいる。
煌牙「この先のようじゃな……」
しっかりと私に寄り添ってくれていた煌牙様の顔が、さらに険しいものになった。
その時…━。
煌牙「ぬしらっ!何をしておるのじゃ!!」
◯◯「っ……!」
煌牙様の怒号が飛び、私まで大きく体が震えた。
賊1「っ!?おっ、おい、煌牙が出てきたぞ!」
賊2「なっ……くそっ!撤退するぞ!」
すぐさま、賊達は逃げようとする。
煌牙様はすうっと目を細めると……
煌牙「逃げるとはな……。 今後、悪事を働けぬよう、灸を据えてやらねばならぬ!」
そう言い終えるが先か、煌牙様は逃げる賊の背中に向かい手をかざした。
その手の先に…ー。
(!なんで強い光……!)
まるで力を集約したかのようなまぶしさをまとった光の輪が、浮かび上がる。
そしてなんとそのまま、逃げる賊を追いかけ始めた。
煌牙「捕らえよ」
煌牙様が、短くつぶやいた途端…ー。
賊1「うわあっ!」
賊2「なっ、何だこれはっ……!?」
光の輪は賊を縛り上げ、すっかり動けなくしてしまった。
◯◯「……すごい……」
あっという間の出来事に、思わず感嘆の声がこぼれ落ちる。
煌牙「皆の者、捕らえて他の悪事がないか確認するのじゃ」
兵たち「はいっ!」
煌牙様の声で、一緒にいた兵士達が一斉に賊を捕らえる。
するとやっと、煌牙様の表情に普段の穏やかさが戻ってきた。
煌牙「怖い思いをさせてしまったの」
優しい顔でそう言ってくれる煌牙様に、私は……
◯◯「……大丈夫です。煌牙様の傍にいたので……」
様々な気持ちが入り乱れており、そう言うのが精一杯だった。
煌牙「そうか。おぬしは強いおなごじゃの」
煌牙様の私を見る目が、一段と優しく温かくなったように感じられる。
煌牙「では、部屋に戻ろうぞ」
◯◯「はい」
煌牙「今日の夕餉は何であろうな」
楽しげに言いながら、また小雨になった空を煌牙様は見上げる。
私も一緒になって空を見上げ……夕餉の好みや互いのことについて話ながら帰路についた。
この時はこれで、全てが解決したのだと思って…ー。