万里『違うんです!』
(万里くん……)
万里『実は前から、ずっと愛の日に君と会いたいと思っていました』
―――――
(それって……もしかして)
その答えを求めるように、口から自然と言葉がこぼれた。
〇〇「……万里くん、ずっとそわそわしていたようだったので。 可愛いものが多いから、わくわくしてるのかと思っていました……」
万里「……」
私の手を握る万里くんの指先が微かに小さく揺れる。
万里「確かにこの街は私の好きなものが多く……でも、そわそわしてしまったのはそのせいじゃないんです。 今日は……アナタにどうしても伝えたいことがあったから……」
〇〇「私に……」
握られたままの手が熱い。
彼の切れ長な瞳が、真っ直ぐに私を見つめる。
その唇が少し戸惑うように言葉を探しながら……
万里「……今日、実はずっとアナタへの贈り物を考えてました」
〇〇「私に……ですか?」
万里「はい。どうしたらアナタの笑顔が見られるのか……アナタが一番嬉しくなる時はどんな時なのか……。ずっと一緒に街を回りながら考えていて……」
〇〇「……」
彼の言葉の一つ一つが、甘いチョコレートが溶けるように私の胸に甘く広がる。
〇〇「万里くん……」
(嬉しい……)
万里「いろいろとアナタと街を回って……ようやく決めました。 〇〇ちゃんのための、私ができる贈り物……」
ふっと力強い瞳が柔らかに細められる。
〇〇「……嬉しいです。なら私、明日を楽しみにしてますね」
万里「はい!」
その後、店を出ると私達は別れた。
明日への甘い予感を、胸に抱きながら…-。
…
……
そして日が変わって、愛の日当日…-。
彼に呼び出されて、私は万里くんの宿泊先を訪れた。
(昨日あんなこと言われたばかりだから、恥ずかしいな……)
〇〇「万里くん……今日は何を?」
万里「はい。アナタと一緒に行きたいところがあるんです」
そう彼に言われて、連れて来られたのは…-。
〇〇「あれ? ここって……」
万里「はい、昨日アナタと最後に訪れた店です」
手を繋いでやって来た先にあったのは、路地裏にあったあの小さなケーキショップだった…-。