第4話 お店巡り

私と万里くんは比較的人の少ない道を選びつつ、様々な店を巡っていた。

万里「そういえば、ぜひ行ってみたい店があって、調べてきたんでした」

万里くんが取り出したメモを覗き込む。

○○「この近くみたいですね」

万里「はい、最近オープンした穴場のお店のようなんですが、その……とにかく可愛いお店だそうで」

○○「素敵ですね。行ってみましょう!」

笑いかけると、万里くんも嬉しそうに微笑んでくれた…―。

万里くんが案内してくれた店は、ノスタルジックな雰囲気のある可愛らしいお店だった。

まるで雑貨屋のような店内にあるものは全てチョコレートで、その種類の多さに目移りしてしまう。

○○「あ、これ綺麗……」

ガラスケースに並べられた、花の形をした小粒のチョコが目に入った。

ショップ店員「こちら新商品になりますので、どうぞ」

○○「ありがどうございます……ん、おいしい!」

店員さんに渡されたチョコレートを口にすると、控えめな甘さと深いコクが口の中に広がった。

万里「本当においしいですね」

○○「はい、見た目も綺麗で可愛いのに」

万里「○○ちゃん、あれは…―!」

万里くんは興奮気味に、視線を店の中央にあるガラスケースの方へ向ける。

そこには動物をモチーフとした可愛らしいチョコレートが並んでいた。

○○「か……かわいい!」

万里「か……かわいい!」

○○「あっ……」

万里「……」

思わず声が重なり、お互い顔を見合わせる。

○○「……被っちゃいましたね」

万里「はい……あんまり可愛らしかったのでつい。 ほら、○○ちゃん、見てください。この店はラッピングも可愛いんです」

○○「そうなんですか?」

レジの方を見ると、店員がお客さんに商品を手渡しているところだった。

その淡いピンクのショッピングバッグも、やっぱりとても可愛らしくて…―。

○○「あのバッグについたチャームはうさぎかな? 素敵……ショッピングバッグまで可愛いなんて、買い物が楽しくなりますね」

万里「アナタもそう思いますか?よかった……私も今そう思ったところなんです」

頬を指先で搔きながら、少し顔を赤くして万里くんが言う。

(ふふっ……万里くん、一流のカンフーアクションスターなのに……)

今ここにいる、彼の素顔が嬉しくて……

(こんな万里くんを見られるのは……私だけ、なのかな?)

そんなおこがましい思いと、胸のときめきを押し隠すように彼の横顔をそっと見る。

万里「○○ちゃん、もう一軒だけ、付き合ってもらっていいですか?」

きらきらと輝く笑顔を向けられ、私は……

○○「あの、もう少しだけ見ててもいいですか?この店、可愛くて」

万里「もちろんです!」

高鳴る胸を落ち着けるように、宝石箱をひっくり返したようなガラスケースを再び覗き込む。

万里「愛の日のショコルーテの街……予想以上でした。これならきっと…―」

○○「え?」

万里「あ、今はまだ……いえ、なんでもありません……!」

万里くんが、慌てて手を横に振る。

(愛の日……)

その言葉の響きが、私の心を甘く波立たせた…―。

 

<<第3話||第5話>>