昼下がりの太陽が石畳の地面に長い影を作っている。
城への帰り道、私とイラさんは手を繋いで歩いていた。
イラ「歩いてるだけなのに、楽しいな。 誰かと手を繋いで歩くのは、生まれて初めてだ」
楽しげな彼の口から驚くような言葉が溢れ、思わず立ち止まってしまった。
〇〇「え!? そうなんですか?」
イラ「うん。皆、怖がって近寄ろうとしなかったから」
〇〇「子どもの頃も……?」
イラ「うん。隣にいていきなり怒り出したら、たまったもんじゃないだろうし」
(そんな……)
私は、イラさんの手を強く握る。
イラ「……手を繋ぐと、優しい気持ちになるんだね」
彼が嬉しそうに笑ったその時……
〇〇「あっ!」
つまずいた拍子に靴が壊れ、膝をついてしまう。
見ると、石畳の舗装が甘く、地面に大きな穴が開いていた。
イラ「〇〇さん!」
私を抱き起した彼の顔は、道を見つめ、冷たく光っていた…―。