月5話 イラの怒り

昼下がりの太陽が石畳の地面に長い影を作っている。

城への帰り道、私とイラさんは手を繋いで歩いていた。

イラ「歩いてるだけなのに、楽しいな。 誰かと手を繋いで歩くのは、生まれて初めてだ」

楽しげな彼の口から驚くような言葉が溢れ、思わず立ち止まってしまった。

〇〇「え!? そうなんですか?」

イラ「うん。皆、怖がって近寄ろうとしなかったから」

〇〇「子どもの頃も……?」

イラ「うん。隣にいていきなり怒り出したら、たまったもんじゃないだろうし」

(そんな……)

私は、イラさんの手を強く握る。

イラ「……手を繋ぐと、優しい気持ちになるんだね」

彼が嬉しそうに笑ったその時……

〇〇「あっ!」

つまずいた拍子に靴が壊れ、膝をついてしまう。

見ると、石畳の舗装が甘く、地面に大きな穴が開いていた。

イラ「〇〇さん!」

私を抱き起した彼の顔は、道を見つめ、冷たく光っていた…―。

 

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