午後の穏やかな風が、イラさんの羽根を揺らす…-。
城へと戻った私達は、テラスで午後のお茶を楽しんでいた。
イラ「いい風だね……」
イラさんが穏やかに目を細め、頬に風を受ける。
(ほんとだ)
私もそっと目を閉じた、その時……
イラ「〇〇さん、危ないっ」
手に強い衝撃を受け、あまりの痛さに目を見開く。
イラ「怪我しなかった!? 大丈夫!?」
〇〇「大丈夫、です……」
目を開けると、大きな鳥が私の持っていたクッキーを奪って飛び去っていくところだった。
(こんなところに、あんな大きな鳥が……?)
遠くで控えていた護衛さん達が、あわてて鳥を追いかける。
イラ「飼育禁止の鳥だ。遠い国の鳥を勝手にこの国に持ち込んで売りさばいてる奴らがいる。 鳥だって、人に飼われるよりも自然の中にいた方が幸せだろうに……なんて無責任な奴らだ」
イラさんは、そっと私の手を取って、怪我がないか調べてくれる。
イラ「……あ、ここに掠り傷が……」
〇〇「え? でも、そんなに痛くないし、大丈夫ですよ」
イラ「……衛兵? すぐに密売人を探しに行くから、ライフルを持って来てくれる?」
(あ……!)
イラ「衛兵、どうしたのです? 空を自由に飛び回っている鳥と同じように、麻酔銃で捕らえなければ」
イラさんの口調が丁寧になる。
(次で、『3度目のイラ様』になっちゃう!)
〇〇「イラさん……」
(どうしよう……)
イラ「そうですね、麻酔銃と言わず実弾を込めていただけると助かりますね。さあ、早…-」
私は、とっさにイラさんの目を目隠しする。
〇〇「イラさん……」
彼の耳元で、そっと名前を呼んでみる。
冷たい怒りを体中から振りまいていたイラさんが、ゆっくりと力を抜いていった…-。