罪過の国・ヴォタリア 奏の月…-。
冷たい空気が窓を白く染める、霧深い昼下がり…-。
イラ「ようこそ、〇〇さん!」
私は、イラ王子に招かれて、罪過の国・ヴォタリアを訪れていた。
イラ「罪過の国なんて怖い名前だから、来るの怖かったでしょ?」
〇〇「いえ、そんな」
イラ「そう? それならよかった。自分の家だと思ってくつろいでね」
イラさんはとても礼儀正しく、でも親しげに話しかけてくれる。
(なんだか、ほっとするな)
イラ「ああ、君達も下がりなさい。姫がくつろげないだろうから」
執事「承知致しました」
微動だにせずにイラさんの横に控えていた執事さんと、部屋の隅に直立していた大勢の衛兵さんが動き出す。
イラ「さあ、これで僕もくつろげる」
扉が閉まると、イラさんはそう言ってにっこりと笑った。
(堂々として、にこやかな方……)
彼の柔らかな笑顔に緊張がほぐれていく。
窓から射し込む柔らかな光の中で、穏やかな時間が流れていた…-。