翌日…-。
案内係「フロスト様、イベントステージの出演枠を押さえましたので!」
フロスト「そうか、礼を言う」
先生「では、歌のトレーニングの他にもレッスンを始めましょう!ここからはライブパフォーマンスと、ダンスが重要になってきますので」
フロスト「ほう、また新たな挑戦か。楽しみだ」
(すごいな。もう連日ずっと、朝から晩まで休みなしなのに)
フロストさんは、どこまでも多くのことを吸収し続けようとしていた…-。
そして、さっそくライブパフォーマンスのレッスンが始まった。
フロスト「なかなか難しそうだな。 想像力も多分に必要だ」
フロストさんは、先生からの説明を受けながら思案顔になり…
フロスト「そうだ。お前、ここで観客の役をやってみろ」
ふと、私へ視線を向けた。
○○「え…!?」
突然、思いもよらぬフロストさんの声に促され、椅子へ腰を下ろした。
けれど…
フロスト「いや、座るのは違うようだ。 あの日、観客は皆立ち上がっていた…」
○○「では、これでいいでしょうか?」
慌てて立ち上がり、フロストさんを見つめる。
フロスト「ふむ…」
なんだか渋い顔をしつつも、フロストさんの歌が始まったけれど…
フロスト「駄目だ。あの日の観客のように、手を振ったり変な棒を持ったりしなければ…ああいや、まあいい。お前も好きなようにしていろ」
○○「…」
(そう言われても、一人で観客の振りなんて恥ずかしくて…)
フロスト「~♪」
(やっぱり、すごい…)
目の前で繰り広げられるフロストさんの華麗なパフォーマンスに、やはり惹きつけられてしまう。
思わず、身を乗り出して体でリズムを取ってしまっていると…
フロスト「…!」
歌い踊るフロストさんと視線がぶつかり、私達は笑いあったのだった…-。
それから数日…-。
その日もライブに向けての練習を行い、帰路についていた。
○○「いよいよ明日が、ライブ本番ですね!」
フロスト「あっという間だったな。 お前の観客役も、やっと板についてきたところだったが」
○○「っ…」
そう言われると恥ずかしくなるものの、当日への期待で胸ははち切れんばかりだった。
○○「私、本番も一番応援しますね」
フロスト「ああ、期待している」
連日のレッスンの成果なのか…
フロストさんの体がとても精悍に見えた。
そんな道中…
○○「あ、フロストさん。あれ見てください」
フロスト「…ポスターか」
私の指差した先には、明日のライブのポスターが貼られていた。
○○「もう今からドキドキしています……明日は頑張ってくださいね」
フロスト「無論だ。一番近いところで見ていろ」
フロストさんの深紅の瞳が、差し込む夕陽を反射して煌きを宿す。
強い意志のこもった声が、私の胸を騒がせた…-。