月7話 観客役!?

翌日…-。

案内係「フロスト様、イベントステージの出演枠を押さえましたので!」

フロスト「そうか、礼を言う」

先生「では、歌のトレーニングの他にもレッスンを始めましょう!ここからはライブパフォーマンスと、ダンスが重要になってきますので」

フロスト「ほう、また新たな挑戦か。楽しみだ」

(すごいな。もう連日ずっと、朝から晩まで休みなしなのに)

フロストさんは、どこまでも多くのことを吸収し続けようとしていた…-。

そして、さっそくライブパフォーマンスのレッスンが始まった。

フロスト「なかなか難しそうだな。 想像力も多分に必要だ」

フロストさんは、先生からの説明を受けながら思案顔になり…

フロスト「そうだ。お前、ここで観客の役をやってみろ」

ふと、私へ視線を向けた。

○○「え…!?」

突然、思いもよらぬフロストさんの声に促され、椅子へ腰を下ろした。

けれど…

フロスト「いや、座るのは違うようだ。 あの日、観客は皆立ち上がっていた…」

○○「では、これでいいでしょうか?」

慌てて立ち上がり、フロストさんを見つめる。

フロスト「ふむ…」

なんだか渋い顔をしつつも、フロストさんの歌が始まったけれど…

フロスト「駄目だ。あの日の観客のように、手を振ったり変な棒を持ったりしなければ…ああいや、まあいい。お前も好きなようにしていろ」

○○「…」

(そう言われても、一人で観客の振りなんて恥ずかしくて…)

フロスト「~♪」

(やっぱり、すごい…)

目の前で繰り広げられるフロストさんの華麗なパフォーマンスに、やはり惹きつけられてしまう。

思わず、身を乗り出して体でリズムを取ってしまっていると…

フロスト「…!」

歌い踊るフロストさんと視線がぶつかり、私達は笑いあったのだった…-。

それから数日…-。

その日もライブに向けての練習を行い、帰路についていた。

○○「いよいよ明日が、ライブ本番ですね!」

フロスト「あっという間だったな。 お前の観客役も、やっと板についてきたところだったが」

○○「っ…」

そう言われると恥ずかしくなるものの、当日への期待で胸ははち切れんばかりだった。

○○「私、本番も一番応援しますね」

フロスト「ああ、期待している」

連日のレッスンの成果なのか…

フロストさんの体がとても精悍に見えた。

そんな道中…

○○「あ、フロストさん。あれ見てください」

フロスト「…ポスターか」

私の指差した先には、明日のライブのポスターが貼られていた。

○○「もう今からドキドキしています……明日は頑張ってくださいね」

フロスト「無論だ。一番近いところで見ていろ」

フロストさんの深紅の瞳が、差し込む夕陽を反射して煌きを宿す。

強い意志のこもった声が、私の胸を騒がせた…-。

 

 

<<月6話||月最終話>>