ステージに向けての練習を始めた翌日…
早速、フロストさんのための新曲を手に先生がレッスン場に入ってきた。
先生「曲はほぼ仕上がりました。あとは…」
フロスト「何か問題でも?」
先生「いえ。歌詞なのですが、ご自身で書かれてはいかがでしょうか?」
○○「…!」
(フロストさんの、作詞…)
驚いたのはフロストさんも同じのようで、やや返事に詰まっている様子だった。
先生「最初から作曲もこなすのは難しいだろうと思いますが。 作詞の部分は、フロスト様なら
できるのではないかと思います。 演出的にも、観客によりアイドルの気持ちが伝わりやすくなりますし」
フロスト「作詞、か…」
先生「定番は、ラブソングとかなんですが…」
(フロストさんの…ラブソング…フロストさんって…どんな愛の言葉を並べるんだろう)
そこまで考えて、ふと頬が熱くなる。
(何考えてるんだろう、私…)
一人で赤面しながら、そんなことを考えてしまっていると…
先生「でも、まあ最近じゃ応援歌などが人気ですね。万人受けしますし」
○○「お、応援歌…!そうですよね! 皆が元気になれるような歌詞がいいと思います」
誰が私の心の声を聞いていたわけでもないのに、恥ずかしくて、つい声を大きくしてしまった。
フロスト「…」
フロストさんの伺うような視線が、私に向けられる。
(睨まれている…ような)
火照ったままの頬も余計に恥ずかしく、どうしてもフロストさんを見ることができない。
先生「フロスト様なら必ず素敵な詩が作れると思いますよ」
先生の勧めに、フロストさんは一つ息を吐いた後…-。
フロスト「わかった。作詞にも挑戦してみよう」
しっかりとした声で、そう返事をしたのだった…-。
翌日…
(一日で書き上げるなんて…)
フロストさんはすでに詩を書き上げており、すぐに歌詞をのせて歌ってみることになった。
先生のピアノ前奏が始まり、フロストさんがリズムを取りながら呼吸を整え始める。
フロスト「~♪…輝く雪に抱かれながら、強く気高い夢を見る」
(すごい…!メロディとも曲の雰囲気ともぴったりで)
フロストさんが歌い始めた瞬間に、このレッスン場の雰囲気が一変した。
フロスト「決して解けることのないこの思いは、いつか煌く結晶に…」
歌詞の内容は、フロストさんの心を歌っているようでもあり、皆に、挑戦の仕方、夢の描き方を伝えるような内容でもあった。
(なんて…まっすぐ心に刺さる詩なんだろう)
フロストさんの紡ぐ音と言葉が、胸を熱くする。
先生「素晴らしい!まさかここまでとは思いませんでした」
○○「私も、すごく感動してしまいました。 早くステージで聴きたいです!」
すると…-。
フロスト「…そうか」
○○「…?」
フロストさんが私を見て、微かに笑ったような気がした…-。
そして、ステージの前日…
今日は、喉を休めるためにゆっくり過ごすことになっていた。
○○「もう、準備はばっちりですか?」
フロスト「ああ、自分で歌詞を書いたのは、言う通り正解だったな。自身の言葉だと思いを乗せやすい。 それに何より、覚える必要がなかった」
○○「はい。とっても素敵な歌でした…強くて、まっすぐで。 でも優しくて…まるで」
フロストさん自身に励まされてるようだと伝えようとした時…-。
フロスト「最初は上手く作れなかった」
○○「え?」
フロスト「どうも強い言葉しか並べられず、詩が固くなった…だが、お前のことを想うと、優しい言葉が浮かんできた」
○○「フロストさん…」
見上げると、私の顔を覗き込む彼の顔が間近に迫っていて…
ドキドキと、途端に心臓の音が速くなる。
○○「…嬉しいです。 ステージ、頑張ってくださいね」
フロスト「ああ、わかっている。お前が見たどんなライブよりも良いものにすると誓おう。 必ず、○○を満足させてやる」
フロストさんの自信に満ちた言葉に、表情に…胸がまた熱くなるのだった…-。