翌日…-。
約束通り迎えに来てくれたフロストさんと一緒に、連日のアイドルレッスンへ向かった。
フロスト「~♪」
今日も、フロストさんの美声がレッスン場に響き渡る。
先生「飲み込みが早く、素晴らしいですよ! 少し早いですが、応用として…-」
目覚め始めたフロストさんのアイドルの才能に、先生もすっかり惚れ込んだ様子だった。
こうして毎日、フロストさんは歌やダンスの練習に励んでいた…-。
フロストさんのアイドルレッスンが始まって数日…
先生「フロスト様は、本当にお上手で才能もおありですね!」
フロスト「アイドルの素質はあるということか?」
先生「それはもう充分に! 驚くほどお上手になられましたし、それに人を引き付ける魅力! 何よりも大事なそれがある!」
(確かに…)
レッスン中、フロストさんの一挙一動に私は釘付けになってしまっていた。
そんな中、先生と話をしていたフロストさんがふと私を見て…
フロスト「いいことを思いついた。 ○○。お前も一緒にレッスンを受けてみろ」
○○「えっ…!?」
フロスト「他人のレッスンを見ることで、学べることもあるだろう」
○○「あ、あの。でも…-」
フロスト「いいからやってみせろ」
○○「あの、私は…自信がないので」
やんわりと遠慮しようと思うのに、フロストさんはさっと私の前に歩み寄った。
フロスト「たわけたことを言うな。 最初から自信のある者などいない」
有無を言わせないフロストさんの言葉が、私の退路を断った。
フロスト「何事も経験だ」
○○「あ…」
フロストさんのしなやかで大きな手が、私の手首を掴む。
ドキリと大きく鼓動が跳ねた。
フロスト「では、ここからのレッスンは一緒にやるぞ」
○○「…はい」
緊張と恥ずかしさを感じながら、フロストさんと一緒のレッスンが始まったのだった…-。
それからしばらく練習を続けていると…
フロスト「○○。なかなかいい声をしているじゃないか」
○○「っ…!」
突然声をかけられ隣を見ると、フロストさんが満足そうに私を見つめていた。
○○「あ…-」
柔らかな彼の表情に、頬が微かに熱くなる。
フロスト「なんだ、その呆けた顔は、この俺が言っているのだ。間違いない」
○○「そ、そんな…」
フロスト「やってみてよかっただろう?」
○○「…はい!」
気が付けば、私も笑いながら深く頷いていた。
フロスト「やってやれないことはない。 未知への挑戦。人の上に立つ者がそれを恐れていては、示しがつかんだろう」
○○「フロストさん…」
その時、ピアノの前に座っていた先生が立ち上がった。
先生「せっかくなので、フロスト様のために新しい曲をご用意させてください」
フロスト「新しい曲だと…? 提供してくれるのか」
先生「はい。その曲で、ステージに立ってみませんか?」
フロスト「…!」
フロストさんの目が驚きに見開かれる。
けれどもそれも一瞬のことで、すぐに不遜な笑みを浮かべた。
フロスト「成果を披露する機会は必要だ。もちろん、挑戦しよう」
(ついに、フロストさんがステージに…)
そう思い、息を呑む。
こうして、フロストさんはアイドルとして初めてのステージに立つことになったのだった…-。