第5話 惹きつけられる魅力

翌日…-。

約束通り迎えに来てくれたフロストさんと一緒に、連日のアイドルレッスンへ向かった。

フロスト「~♪」

今日も、フロストさんの美声がレッスン場に響き渡る。

先生「飲み込みが早く、素晴らしいですよ! 少し早いですが、応用として…-」

目覚め始めたフロストさんのアイドルの才能に、先生もすっかり惚れ込んだ様子だった。

こうして毎日、フロストさんは歌やダンスの練習に励んでいた…-。

フロストさんのアイドルレッスンが始まって数日…

先生「フロスト様は、本当にお上手で才能もおありですね!」

フロスト「アイドルの素質はあるということか?」

先生「それはもう充分に! 驚くほどお上手になられましたし、それに人を引き付ける魅力! 何よりも大事なそれがある!」

(確かに…)

レッスン中、フロストさんの一挙一動に私は釘付けになってしまっていた。

そんな中、先生と話をしていたフロストさんがふと私を見て…

フロスト「いいことを思いついた。 ○○。お前も一緒にレッスンを受けてみろ」

○○「えっ…!?」

フロスト「他人のレッスンを見ることで、学べることもあるだろう」

○○「あ、あの。でも…-」

フロスト「いいからやってみせろ」

○○「あの、私は…自信がないので」

やんわりと遠慮しようと思うのに、フロストさんはさっと私の前に歩み寄った。

フロスト「たわけたことを言うな。 最初から自信のある者などいない」

有無を言わせないフロストさんの言葉が、私の退路を断った。

フロスト「何事も経験だ」

○○「あ…」

フロストさんのしなやかで大きな手が、私の手首を掴む。

ドキリと大きく鼓動が跳ねた。

フロスト「では、ここからのレッスンは一緒にやるぞ」

○○「…はい」

緊張と恥ずかしさを感じながら、フロストさんと一緒のレッスンが始まったのだった…-。

それからしばらく練習を続けていると…

フロスト「○○。なかなかいい声をしているじゃないか」

○○「っ…!」

突然声をかけられ隣を見ると、フロストさんが満足そうに私を見つめていた。

○○「あ…-」

柔らかな彼の表情に、頬が微かに熱くなる。

フロスト「なんだ、その呆けた顔は、この俺が言っているのだ。間違いない」

○○「そ、そんな…」

フロスト「やってみてよかっただろう?」

○○「…はい!」

気が付けば、私も笑いながら深く頷いていた。

フロスト「やってやれないことはない。 未知への挑戦。人の上に立つ者がそれを恐れていては、示しがつかんだろう」

○○「フロストさん…」

その時、ピアノの前に座っていた先生が立ち上がった。

先生「せっかくなので、フロスト様のために新しい曲をご用意させてください」

フロスト「新しい曲だと…? 提供してくれるのか」

先生「はい。その曲で、ステージに立ってみませんか?」

フロスト「…!」

フロストさんの目が驚きに見開かれる。

けれどもそれも一瞬のことで、すぐに不遜な笑みを浮かべた。

フロスト「成果を披露する機会は必要だ。もちろん、挑戦しよう」

(ついに、フロストさんがステージに…)

そう思い、息を呑む。

こうして、フロストさんはアイドルとして初めてのステージに立つことになったのだった…-。

 

 

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