それは、平凡なある日の出来事だった…―。
フロスト「見分を広めるため、『アイドルの国』とやらに赴く。よければお前もくるといい」
(アイドルの…国?)
フロストさんからの突然の連絡をもらった私は、『アイドルの国』へと同行することになった…―。
……
私はフロストさんとの約束の場所へと急いでいた。
(ここが、アイドルの国?)
周りを見ると、きらきらした派手な衣装を身にまとった人たちが、忙しそうに行きかっていた。
すると…―
フロスト「○○」
○○「フロストさん!」
美しい銀髪を揺らし、堂々とした足取りでフロストさんが歩いてくる。
けれど…―。
(フロストさんが……制服?アイドルの国なのに?)
フロスト「……聞きたいことがあるなら口に出せ」
思いもよらない姿をまじまじと見つめてしまっていると、不機嫌そうな声が返ってくる。
○○「す、すみません。 あの、その格好は…―」
フロスト「この国の正装だ」
制服とはいえ豪華な上着をひるがえし、フロストさんが悠然と答える。
○○「でも、ここ……アイドルの国なんですよね?」
フロスト「ああ、最近そう呼ばれるようになったらしい」
○○「最近?」
フロスト「もとは何の特色もない国だったが、アイドルを名乗る3人組が突如現れ、瞬く間に名を広げたのだ。 今はアイドルというものを目指す者たちが、世界各国から集ってきている。 その3人組に敬意を表し、俺も彼らの装いをしてきたという訳だ」
(じゃあ、この国はアイドル養成が盛んな国……ってことだよね)
華やかなステージで歌い踊るアイドルたちを思い描く。
○○「……」
(フロストさんが……?)
アイドル姿のフロストさんを、なかなかうまく想像できずにいると…―
フロスト「この国は、新しく知り、吸収することの連続だ。なかなか面白い。 日々行われる訓練や、その姿勢等、学ぶことが多い。 お前もきっと楽しめるだろう」
フロストさんはいつになく生き生きとした表情をしていた。
○○「そうなんですね。 なんだか安心しました」
フロスト「どういうことだ?」
○○「いえ、実はフロストさんのアイドル姿が上手く想像できなかったんですけど。 その様子だったら、きっと楽しめるんじゃないかなって…―」
その時、フロストさんの片眉がピクリと動いた。
フロスト「つまりお前は……アイドルというものを知っていたということか?」
○○「え?はい」
フロスト「なんだと……」
心底意外そうな顔をした後、フロストさんはコホンと一つ咳払いをした。
フロスト「……そうか。では、ついてこい」
○○「え……?」
問い返す間もなく、フロストさんは颯爽と歩き始めたのだった…―。