明るい笑顔が溢れる街を、シュニー君と並んでゆっくりと歩く。
シュニー「お前はこの国のこと、ちゃんと知ってるのか?」
○○「確か、アイドルがたくさんいるって・・・・・・」
シュニー「じゃあ、アイドルがどんなものかは?」
○○「歌やダンスなどで人を笑顔にする職業・・・・・・でしょうか」
シュニー「・・・・・・歌やダンスで人を笑顔に?」
シュニー君はピンと来ない様子で首を傾げる。
○○「歌には興味ないですか?」
シュニー「・・・・・・!こ、高潔なる一族が人前で歌うなんて。 だって、歌やダンスで人を笑顔にだなんて意味がわからないよ」
シュニー君は小さくつぶやいた後、道行く人達を見回す。
(それなら・・・・・・)
○○「体験してみるというのはどうですか?」
シュニー「体験?」
○○「はい。今回は文化交流が目的ですから、きっとお願いすれば教えてもらえると思いますし・・・・・・。アイドルのことがよくわかるんじゃないかと思って」
シュニー「・・・・・・でも・・・・・・。・・・・・・ダンス、でしょ」
珍しく言い淀みながら、シュニー君が眉間に皺を寄せる。
(シュニー君?)
○○「もしかして、ダンスは苦手なんですか?」
尋ねると、シュニー君は整った眉をつり上げて私の顔を睨みつけた。
シュニー「僕に苦手なものなんてあるわけないでしょ。嫌いなだけだ!」
○○「そうですか・・・・・・? じゃあ、アイドル体験は・・・・・・」
シュニー「しないよ! なんで僕がそんなこと」
ぷいっと背中を向けて、全身で『断固拒否』と告げてくる。
その時だった。
女性1「ねえねえ、あっちでライブをやってるんだって!」
女性2「本当? 見に行こう!」
女の子達はそう言って駆け出し・・・・・・
辺りにいる人々も、彼女達の後を追い始めた。
シュニー「ライブ・・・・・・?」
(やっぱり、アイドルのライブかな。それなら・・・・・・)
私は、そっとシュニー君の手を取る。
シュニー「・・・・・・っ! い、いきなりなんだよ!?」
○○「シュニー君、行きましょう。きっとアイドルのことがよくわかると思いますから」
シュニー「・・・・・・」
シュニー君はわずかに怪訝そうな顔をしたものの、私の手を振り払うことはなく・・・・・・
シュニー「・・・・・・仕方ないな。お前がそこまで言うなら行ってあげるよ。けど、僕はこういった場には慣れていない。絶対に手を離すんじゃないぞ!」
○○「はい!」
私はシュニー君と手を繋ぎ、人々の後を追うようにライブ会場へと向かう。
・・・
・・・・・・
シュニー「これって・・・・・・」
歓声と音楽が溢れるステージには、満面の笑みで踊る男の子達がいる。
たくさんの人達が歓声を上げ、笑みを浮かべ・・・・・・興奮気味に手を振っていた。
(素敵・・・・・・こんなに楽しいライブが見られるなんて思わなかった)
ステージで踊り続ける男の子達に、私までつられて笑顔になる。
シュニー「・・・・・・お前もアイドルが好きなのか?」
○○「そういうわけではないですけど、見ていると楽しい気持ちになってしまって」
シュニー「ふーん・・・・・・」
シュニー君は透き通った瞳をじっとこちらに向け、つぶやく。
シュニー「アイドルは、お前のことも笑顔にするんだな」
○○「え?」
シュニー「・・・・・・!な、なんでもない!」
それだけ言うと、さっと視線をステージに戻してしまう。
(シュニー君?)
シュニー君の言葉の意味が、気になりながらも・・・・・・
私は明るい音楽とたくさんの笑顔が溢れるステージに、どんどん引き込まれていったのだった・・・ー。