第2話 アイドルのライブ

明るい笑顔が溢れる街を、シュニー君と並んでゆっくりと歩く。

シュニー「お前はこの国のこと、ちゃんと知ってるのか?」

○○「確か、アイドルがたくさんいるって・・・・・・」

シュニー「じゃあ、アイドルがどんなものかは?」

○○「歌やダンスなどで人を笑顔にする職業・・・・・・でしょうか」

シュニー「・・・・・・歌やダンスで人を笑顔に?」

シュニー君はピンと来ない様子で首を傾げる。

○○「歌には興味ないですか?」

シュニー「・・・・・・!こ、高潔なる一族が人前で歌うなんて。 だって、歌やダンスで人を笑顔にだなんて意味がわからないよ」

シュニー君は小さくつぶやいた後、道行く人達を見回す。

(それなら・・・・・・)

○○「体験してみるというのはどうですか?」

シュニー「体験?」

○○「はい。今回は文化交流が目的ですから、きっとお願いすれば教えてもらえると思いますし・・・・・・。アイドルのことがよくわかるんじゃないかと思って」

シュニー「・・・・・・でも・・・・・・。・・・・・・ダンス、でしょ」

珍しく言い淀みながら、シュニー君が眉間に皺を寄せる。

(シュニー君?)

○○「もしかして、ダンスは苦手なんですか?」

尋ねると、シュニー君は整った眉をつり上げて私の顔を睨みつけた。

シュニー「僕に苦手なものなんてあるわけないでしょ。嫌いなだけだ!」

○○「そうですか・・・・・・? じゃあ、アイドル体験は・・・・・・」

シュニー「しないよ! なんで僕がそんなこと」

ぷいっと背中を向けて、全身で『断固拒否』と告げてくる。

その時だった。

女性1「ねえねえ、あっちでライブをやってるんだって!」

女性2「本当? 見に行こう!」

女の子達はそう言って駆け出し・・・・・・

辺りにいる人々も、彼女達の後を追い始めた。

シュニー「ライブ・・・・・・?」

(やっぱり、アイドルのライブかな。それなら・・・・・・)

私は、そっとシュニー君の手を取る。

シュニー「・・・・・・っ! い、いきなりなんだよ!?」

○○「シュニー君、行きましょう。きっとアイドルのことがよくわかると思いますから」

シュニー「・・・・・・」

シュニー君はわずかに怪訝そうな顔をしたものの、私の手を振り払うことはなく・・・・・・

シュニー「・・・・・・仕方ないな。お前がそこまで言うなら行ってあげるよ。けど、僕はこういった場には慣れていない。絶対に手を離すんじゃないぞ!」

○○「はい!」

私はシュニー君と手を繋ぎ、人々の後を追うようにライブ会場へと向かう。

・・・
・・・・・・

シュニー「これって・・・・・・」

歓声と音楽が溢れるステージには、満面の笑みで踊る男の子達がいる。

たくさんの人達が歓声を上げ、笑みを浮かべ・・・・・・興奮気味に手を振っていた。

(素敵・・・・・・こんなに楽しいライブが見られるなんて思わなかった)

ステージで踊り続ける男の子達に、私までつられて笑顔になる。

シュニー「・・・・・・お前もアイドルが好きなのか?」

○○「そういうわけではないですけど、見ていると楽しい気持ちになってしまって」

シュニー「ふーん・・・・・・」

シュニー君は透き通った瞳をじっとこちらに向け、つぶやく。

シュニー「アイドルは、お前のことも笑顔にするんだな」

○○「え?」

シュニー「・・・・・・!な、なんでもない!」

それだけ言うと、さっと視線をステージに戻してしまう。

(シュニー君?)

シュニー君の言葉の意味が、気になりながらも・・・・・・

私は明るい音楽とたくさんの笑顔が溢れるステージに、どんどん引き込まれていったのだった・・・ー。

 

 

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