パークの様子をカメラに収めながら私とテルさんはさまざまなアトラクションを楽しんでいた。
テル「それじゃあつぎはどこに行こうか?」
○○「テルさんは、どこか行きたいところはないんですか? 撮りたいものとか……」
テル「いや、特にはないよ」
○○「そうですか……」
少し残念に思いながら返事をすると、彼は慌てたように回していたカメラを止める。
テル「すまない。今の言い方では語弊があったな。 今日は君と一緒にいろいろな場所を回ることができて、すごく楽しかったんだ。だから……。 俺も……少しは君を、パーク内でもてなしたいと……思ったんだけど。 ……駄目だろうか?」
○○「えっ……?」
思ってもみなかった言葉に、顔を上げる。
テル「! 今の表情、すごくいい! ああ、カメラを回してなかったことが悔やまれる……! いや、違う! 君をもてなしたいと思った気持ちは本当だよ……でも…―」
○○「テルさん……。 大丈夫ですよ、ちゃんとわかっていますから」
テル「そうか。それならよかった……」
そう言ってテルさんは、ほっと胸を撫で下ろすと……
テル「……ともかく、だ。 俺はもっともっと君を喜ばせたい。だから、君の行きたい場所を回りたいんだ」
○○「わかりました。それじゃあ……」
私は多くの人で賑わうパーク内を見渡す。
すると、少し離れた場所にアイスクリームを売っているワゴンを見つけた。
○○「二人でアイスを食べませんか?」
テル「えっ? そんなことでいいのか?」
○○「はい!」
テル「わかった。それじゃあ買いに行こうか」
私はテルさんと一緒に、チョコミントアイスを頼む。
(おいしい……)
今日は少し暑いせいか、アイスの冷たさが心地よい。
その時だった。
テル「……そこ、垂れそうだよ」
そう言うなり、彼は私のアイスを舐め取る。
○○「!」
テル「垂れると画的によくない」
(びっくりした……)
驚きと恥じらいで、テルさんから思わず目を逸らしてしまう。
すると、彼が私の顔を覗き込んできた。
テル「ん? なんで赤くなって…―」
言いかけたところで、テルさんの動きがぴたりと止まる。
そして……
テル「……!! す、すまない、悪気はなかったんだ! ただ、その……。 ……本当にすまない。新しいものを買ってくるよ」
○○「あっ! いえ、大丈夫です」
顔を真っ赤にしながら駆け出すテルさんの腕を、とっさに掴む。
テル「で、でも……嫌じゃないのか?」
○○「はい。その、少し恥ずかしいですけど、嫌では……」
テル「……そ、そうか」
テルさんは短くそう言った後、アイスを口に運ぶ。
(甘い……)
彼に倣うように口に入れたアイスはなぜかとても甘く感じられた…―。
…
……
パークを回る内に、いつしか日も傾き……
テル「……○○。 実は君を今日一番見てほしいアトラクションにまだ案内していない。 プロジェクションマッピングのショーなんだけど……一緒に見てもらえないかな?」
(プロジェクションマッピング……?)
真剣な表情を浮かべる彼に、私は静かに頷いた…―。