雲一つない青空にプレオープンを祝う色とりどりの紙吹雪が舞う…―。
テル「ようやくこの日が来た……」
○○「テルさん、おめでとうございます」
テル「ありがとう。それと……今日まであまり構えず、すまなかった。 その罪滅ぼしというわけではないが、今日は俺がパークを案内するよ」
パーク内には、さまざまなアトラクションが並んでいる。
私はそれらと、先日テルさんからもらったパンフレットを見比べ……
○○「あれはなんですか?」
周りとは明らかに雰囲気の異なる建物が気になり、指を差す。
すると……
テル「……っ、駄目だ! あそこには行かない。きっとろくなことにならないからな」
○○「テルさん?」
明らかに嫌悪感を示す彼を不思議に思いながら、パンフレットを見ると……
○○「ウィル・ビートンのホラーレストラン、『グレータウンの沈黙』……」
(これって、ウィルさんの……?)
ウィルさんはテルさんの弟で、ホラー映画監督をしている。
○○「本当に行かなくていいんですか? もし、私に気を使っているようなら…―」
テル「ち、違う! 本当に行きたくないんだ! あいつは、絶対にひどい仕掛けで俺を脅してくる」
(よっぽど嫌なんだ……)
私は小さく震えるテルさんと一緒にその場を後にし、別のゾーンへと向かう。
…
……
そうして、しばらく……
(この辺りは子ども向けのアトラクションが多いのかな?)
(カラフルで、なんだかすごくかわいい)
辺りを見回しながら歩みを進めていく。
テル「……いい顔だ」
○○「え?」
振り向けば、テルさんは私に向けてカメラを回していた。
○○「あの、テルさん……?」
テル「どうした? ……ああ、レンズに視線が向くのもいいな。 だけど、もう少し違った表情も欲しい」
テルさんがカメラを下ろし、私をじっと見つめる。
○○「でも、どうすれば……」
テル「例えば、このレンズの場所にいるのが君の恋人のように振る舞う……。 そんな感じで、はにかむように笑いかけて欲しい。いいか? はい、スタート!」
○○「え!?」
テルさんが指を鳴らすなりカメラを回し始める。
(こ、恋人って言われても……)
レンズの向こうにいるのがテルさんだと思うと、急に鼓動が騒ぎ始め……
(こ、これでいいのかな?)
レンズ越しのテルさんを想って微笑む。
すると、その時……
テル「……っ!」
カメラを持つ彼の手が、大きく揺れた。
○○「テルさん……?」
テル「すまない。君があまりにも素敵な表情をするものだから……」
耳まで真っ赤になったテルさんが、ふいっと目を逸らす。
そんな彼に、私の頬も少しずつ熱を帯びてきてしまった。
テル「つ、次は昼食を食べながら会話をするシーンを撮ろうか? 初めてパークを訪れる人々の喜ぶ顔をバックに撮りたいんだ。いいかな?」
○○「はい」
頷くものの、まだ鼓動は落ち着かなくて……
しばらくの間、どこかふわふわとした気持ちのままテルさんの被写体になり続けたのだった…―。