テルさんからビートン・フィルムパークに招待された私は、これからまだ仕事があるという彼と別れた後…―。
テル「すまないね。せっかく君を招待したのに、もてなすことができなくて」
○○「いえ……こちらこそお忙しいのにすみません」
夕方までプレオープン前のパークを見学し、宿泊先となるケナル城へとやってきた私は、テルさんに、城の一角にある豪華な部屋へと案内してもらう。
テル「今日はこの客室でゆっくり休むといい。 あと、これはプレオープン用に刷ったものなんだけど……」
テルさんか一冊のパンフレットを手渡される。
テル「俺はプレオープンまではずっと仕事詰めだから、よかったら明日はこれを見ながらパークを回るといい。 ほとんどのアトラクションが最終点検中だけど……散歩するだけでも楽しいと思うから」
○○「わかりました、ありがとうございます」
私がそう返事をすると、テルさんが目を細めた。
テル「招待状にも書いた通り、このパークのアトラクションは映画が元になってるんだ。 建物や乗り物、そして映像……パークを形作るすべてのものに力を入れてるから、期待していてくれ」
○○「はい!」
(でも、そういえばテルさん自体が深く関わるアトラクションって……)
私は気になってパンフレットを開いてみた。
けれどそこには総指揮として記されているだけで、彼の名前を冠したアトラクションがない。
その時…―。
テル「……っ」
○○「テルさん!?」
テルさんの体がくらりと揺れ……
次の瞬間、彼は傍にある机へと勢いよく手をついた。
○○「テルさん、大丈夫ですか!?」
テル「あ、ああ。大丈夫だ。 心配をかけてすまない。ここのところ忙しかったせいで、あまり寝てなくて……」
力なく笑うテルさんの顔を、そっと覗き込む。
すると……
テル「本当に大丈夫だよ。 少し立ちくらみがしただけ。けれど……」
顔を上げたテルさんが、私をじっと見つめる。
テル「……」
○○「どうしたんですか?」
テル「いや、心配してくれるのが嬉しかった……特に深い意味はないんだ」
軽く頭を振った後、彼は力なく笑う。
(やっぱりこんなテルさんを残して一人でパークを回るなんて……)
○○「あの、よかったら私にも少しお手伝いさせてください」
テル「……いいのかい?」
驚いたように言うテルさんに、私は静かに頷く。
テル「そうか……ありがとう」
眠気のせいか、いつもよりわずかにゆっくりとした口調は、なんだか甘えているみたいで……
(頼ってもらえてるみたいで、嬉しいな)
先ほどまでの不安は和らぎ、温かな気持ちが湧いてきたのだった…―。