アトラクションの改修が始まってから数日後…―。
グレアム君からの招待状を受け取り、私はまたビートン・フィルムパークを訪れていた。
(今度こそ無事に、オープンできたそうだけど)
グレアム「○○」
約束の時間に到着すると、グレアム君が入り口で待ってくれていた。
○○「グレアム君……! わざわざありがとうございます」
グレアム「い、いや、別に。招待したのは俺だからね」
○○「でも嬉しいです! もう一度グレアム君のアトラクションを体験できるなんて…―」
笑顔でお礼を言うと、グレアム君は頬を染めて目を背けてしまう。
(照れてるのかな?)
ふとそう思ったものの……
グレアム「とにかく、今度こそ……グレアム原作のアトラクションに行こう。 先日は事件のせいで楽しめなかったから、今日は再度挑戦だよ」
○○「あ……待ってください」
さっと身をひるがえしパーク内に入って行くグレアム君を、私も慌てて追いかけた…―。
…
……
グレアム君原作のアトラクションは、謎解きの脱出ゲームになっていた。
グレアム「脱出成功の際の贈り物は、俺が書き下ろした小冊子なんだ」
○○「そうなんですね。読めるといいな」
するとグレアム君は、自信たっぷりな笑みを浮かべて…―。
グレアム「必ず読めるよ。 これから挑戦するアトラクションは、自分で書いた小説の謎解き。 予習も展開も、脳内構造もすべて俺と一致するもの。よって、万全。 お前は必ず、俺の小冊子を読めるよ」
頼もしい姿にくすりと笑うと……
グレアム「どうして笑うんだよ。期待してて問題ないからな」
グレアム君が少し不機嫌そうに眉をしかめて、コーヒー色のキャンディーを口に放り込む。
かと思えば、私にも無言でキャンディーを差し出してきた。
グレアム「ん……行くよ」
○○「……! ありがとうございます」
小さなキャンディーを受け取ると、胸が不思議と弾み出す。
わくわくする気持ちのまま、私はアトラクションに足を踏み入れた。
けれど…―。
…
……
○○「!!」
突然降ってくる大きな蛇に驚かされたり……
飛び出す映像で猛獣が襲いかかってきたり……
予想以上に怖い演出に、終始驚いてばかりだった。
グレアム「これは……まさかテルが改修したのか? ……いや」
ぐっと拳を握りしめた後、グレアム君は何かを悟ったかのように深いため息を吐いた。
グレアム「また一段と恐ろしいアトラクションになってしまったみたいだね」
○○「すごい演出ですね……」
あまりの恐怖にグレアム君にしがみついてしまっていると、肩が抱き寄せられた。
○○「っ……」
見れば、グレアム君は照れくさそうにしながら唇を引き結んでいる。
○○「あ、あの……ありがとう。グレアム君」
グレアム「……別に。 ほら、次の謎に進むよ。またヒントをあげるから」
(助けてもらってばかり……頼もしいな)
その後もグレアム君に謎解きを手伝ってもらったり、怖い時には寄り添ってもらいながら先へと進む。
けれど…―。
(あれ……?)
いつの間にか、私の前を歩いてくれていたグレアム君の姿がない。
(もしかして……はぐれちゃった!?)
薄暗い洞窟の中、たちまち胸に不安が広がっていった…―。