視界が暗転し、体に強い痛みが走る…―。
○○「っ……ここは……?」
落下した時の、体を打ちつけた痛みに耐えながらゆっくりと起き上がる。
辺りは先ほどの場所よりも薄暗く……狭い地下空間のようだった。
(アトラクションの中に、こんな場所があったなんて)
(これも……アトラクションのトリックの一つ?)
不思議な気持ちと恐怖を噛みしめていた時だった。
??「う……う……」
○○「っ……!?」
不気味な声が聞こえて、体がびくりと震える。
(怖い……)
一人きりの暗闇は、アトラクションの中だとわかっていても心底気味が悪い。
―――――
グレアム『とにかく、明日の本オープンまでに解決しなければならない』
―――――
(グレアム君……)
グレアム君の、真剣な表情が頭を過ぎる。
(……行ってみよう)
勇気を振り絞って、声の聞こえた先へ進むことにする。
すると…―。
○○「っ……!」
突然、黒い大きな影が目の前に現れた。
(何……っ!?)
思わず目をつむるけれど、恐怖のあまり体が動かない。
(グレアム君……!!)
心の中で、彼の名前を呼んでしまうと…―。
??「? 君は…―」
穏やかな声が耳に届いて、恐る恐る瞳を開く。
○○「え……?」
大柄の男性が一人、不思議そうに私を見つめていた。
男性「お客さん……かい?」
○○「あなたは……?」
と、その時…―。
グレアム「○○……!」
グレアム君の切羽詰まった声が、地下空間に響いた。
○○「グレアム君……!」
背後から聞こえた声に、振り返った瞬間……
○○「っ……!?」
飛びつくようにしっかりと体を抱きしめられた。
グレアム「よかった……!」
きつく抱きしめられた心地に、胸がドキドキと音を立て始める。
グレアム「どうして勝手な行動をするんだ! 心配で頭がおかしくなりそうだった。 このままこのアトラクションの迷宮に捕らわれてしまったならと考えると、何も考えられなくなって……!」
(グレアム君……)
私を抱きしめる彼の腕が、微かに震えている。
○○「……心配かけてごめんなさい」
そう言うと、グレアム君はことさら強く、私のことを抱きしめた。
グレアム「そうだ。その通り……俺がどれだけ心配したか…―」
そこでグレアム君は、はっとしたように私から体を離した。
グレアム「ん……コホン。すまない」
男性「……あのぅ」
一部始終を見守っていた男性が、おずおずと私達に声をかける。
男性「あなたは……グレアム様!?」
グレアム「そうだが……お前は? こんなところで何をしている?」
男性「ああ、すみません。ここ、新しい設計だったんで入念に確認していたんです」
グレアム「新しい……設計?」
男性「はい。予定より時間かかっちまってるけど、不備があったら大変なんで」
グレアム「っ……!」
男性の言葉に、グレアム君と私は顔を見合わせる。
(じゃあこの人は……!)
グレアム「お前が、行方不明の男性か……!」
グレアム君の瞳が、きらりと強く輝いた。
グレアム「実は、○○が突然姿を消したことで、慌てて再度調査をした。 新旧の設計書を急遽照らし合わせ、内部の構造を洗い直してみたんだが。 すると、最新の設計図にはない道があることがわかったんだ」
○○「え……」
(それが、この人の言ってる追加になった新しい設計?)
グレアム「俺が、二つの設計書を合わせて、助けに来られたことが奇跡なほど、巧妙なトリックだ」
○○「いったい誰が…―」
グレアム「……それはもう、わかっている」
グレアム君の瞳が、手にした設計書を私に見せてくる。
そこに書かれていたのは、この仕掛けにかかった人達が浮かべるであろう、驚愕の表情に関する記述…―。
男性「あの……もしかして俺、何か悪いことしちまいましたかね?」
男性が、おずおずと私達に問いかける。
グレアム「お前に指示を出したのは……ウィルだな」
男性「はい。まさか皆知らなかったなんて……」
グレアム「あいつは……まったく」
疲れ切った様子で、グレアム君はため息を吐いた…―。