事件のあったアトラクションの前まで来ると、目の前に大自然が広がった。
グレアム「ここが事件発生現場か」
○○「なんだか本物の大自然みたいな造りで、すごいですね。 でもちょっと……怖そう」
すぐ傍に立つグレアム君の服の裾を、思わずきゅっと掴んでしまう。
グレアム「……っ」
ちらりと、グレアム君が私を見やる。
グレアム「……これくらいで怖いのか?」
○○「だってここで……その、誰かが消えてしまったんですよね」
グレアム「そうだ、な……」
グレアム君の声は、やや上ずっていた。
(どうしたのかな……?)
グレアム「こ、このアトラクションの話は確かに俺が作ったものだが。 今回の事件は、俺の本にもない不可思議な流れだ。よって……。 ああ、違う。このことが俺の本に書かれているのならば、事件と呼べないな」
(グレアム君?)
彼の知的な瞳が、今は忙しそうに泳いでいる。
(もしかしてグレアム君も、緊張してる?)
そう思った瞬間…―。
グレアム「とにかく、現地へ向かう……離れないのが得策だ……」
○○「っ……」
私から背けた横顔をほんのりと赤く染めながら、グレアム君がぎゅっと私の手を握った。
(手を繋いでくれたのは……グレアム君の優しさだよね?)
そう思った私は、気恥ずかしさを感じながらも手を握り返した。
グレアム「っ……! て、手は、ずっと繋いでいよう」
○○「はい……」
二人で寄り添い、通用口からアトラクションの中へと入っていく。
グレアム「アトラクションの中は、物語をそのまま感じられる作りになってるんだ。 ミステリー仕立てで、演出的には恐怖を感じさせるところなんかもあるけど……」
グレアム君がそう言った矢先…―。
○○「っ……!?」
グレアム「……!」
目の前に、たくさんの鳥が飛来した。
さながら大自然の洞窟の中にいるようなアトラクションに、本気で身がすくんでしまう。
グレアム「……平気だよ。ただの、鳥の映写だ」
○○「そ、そうなんですね。まるで本物のように見えて……」
グレアム「うん、ということは、あの鳥の演出は成功だろうね。 大丈夫だから、先へ進もう」
再度、強く握ってくれた彼の手が、熱く湿っているように感じた…―。
…
……
グレアム「この辺りだね。 スタッフが消えた場所は……」
○○「そうなんですね……」
そう言われれば突然、その場所の不気味さが増す。
○○「……」
恐怖を感じ、思わずグレアム君へ肩を寄せると……
グレアム「っ……。 だ、大丈夫だ。俺がすぐに解決しよう」
グレアム君の大きな声が、洞窟にこだました。
薄暗く不気味な洞窟は作られたアトラクションであると、到底思えそうになかった…―。