第3話 推理開始

事件のあったアトラクションの前まで来ると、目の前に大自然が広がった。

グレアム「ここが事件発生現場か」

○○「なんだか本物の大自然みたいな造りで、すごいですね。 でもちょっと……怖そう」

すぐ傍に立つグレアム君の服の裾を、思わずきゅっと掴んでしまう。

グレアム「……っ」

ちらりと、グレアム君が私を見やる。

グレアム「……これくらいで怖いのか?」

○○「だってここで……その、誰かが消えてしまったんですよね」

グレアム「そうだ、な……」

グレアム君の声は、やや上ずっていた。

(どうしたのかな……?)

グレアム「こ、このアトラクションの話は確かに俺が作ったものだが。 今回の事件は、俺の本にもない不可思議な流れだ。よって……。 ああ、違う。このことが俺の本に書かれているのならば、事件と呼べないな」

(グレアム君?)

彼の知的な瞳が、今は忙しそうに泳いでいる。

(もしかしてグレアム君も、緊張してる?)

そう思った瞬間…―。

グレアム「とにかく、現地へ向かう……離れないのが得策だ……」

○○「っ……」

私から背けた横顔をほんのりと赤く染めながら、グレアム君がぎゅっと私の手を握った。

(手を繋いでくれたのは……グレアム君の優しさだよね?)

そう思った私は、気恥ずかしさを感じながらも手を握り返した。

グレアム「っ……! て、手は、ずっと繋いでいよう」

○○「はい……」

二人で寄り添い、通用口からアトラクションの中へと入っていく。

グレアム「アトラクションの中は、物語をそのまま感じられる作りになってるんだ。 ミステリー仕立てで、演出的には恐怖を感じさせるところなんかもあるけど……」

グレアム君がそう言った矢先…―。

○○「っ……!?」

グレアム「……!」

目の前に、たくさんの鳥が飛来した。

さながら大自然の洞窟の中にいるようなアトラクションに、本気で身がすくんでしまう。

グレアム「……平気だよ。ただの、鳥の映写だ」

○○「そ、そうなんですね。まるで本物のように見えて……」

グレアム「うん、ということは、あの鳥の演出は成功だろうね。 大丈夫だから、先へ進もう」

再度、強く握ってくれた彼の手が、熱く湿っているように感じた…―。

……

グレアム「この辺りだね。 スタッフが消えた場所は……」

○○「そうなんですね……」

そう言われれば突然、その場所の不気味さが増す。

○○「……」

恐怖を感じ、思わずグレアム君へ肩を寄せると……

グレアム「っ……。 だ、大丈夫だ。俺がすぐに解決しよう」

グレアム君の大きな声が、洞窟にこだました。

薄暗く不気味な洞窟は作られたアトラクションであると、到底思えそうになかった…―。

 

 

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