再会したグレアム君は、思慮深い瞳を光らせて……
グレアム「残念ながら事件発生だ……!」
(……事件!?)
グレアム君が意気込んで話し始めたので、私もそれに押されるように気持ちが高ぶってくる。
グレアム「今はまだプレオープン。それなのにすでに一つの謎が生まれてしまった。 実は、さっき壇上で紹介したこの俺の作品が原作となっているアトラクションで……」
グレアム君は一旦言葉を止めると、少しの間を空ける。
○○「アトラクションで……? どうしたんですか?」
グレアム「スタッフが突然消えた」
○○「っ……!」
グレアム「それこそ、最初からそこにいなかったように忽然と……! 消えてしまったという。 これぞまさしく、不可解なミステリー……」
考え込むように目を伏せながら、顎に手をあてる彼に……
○○「人が消えたなんて……いったい、どうなるんですか?」
不安になり、そう問うと……
グレアム「だから言ったよね?」
グレアム君は、眼差しを強くして、射貫くように私を見つめた。
グレアム「俺の出番だって。 とにかく、明日の本オープンまでに解決しなければならない。 新作の執筆中であり、多忙な身ではあるが……」
○○「新作?」
グレアム「……そうだよ」
するとグレアム君が、何かを期待するような視線をこちらにちらりと向けた。
(……この顔は)
○○「新作……楽しみです!」
途端、自信に満ちた笑みが彼の顔いっぱいに浮かべられる。
グレアム「『水晶宮からの招待状』が好評でね、すぐにでもという話になったんだ。 推理一辺倒ではなくそれに加え新しい試みを取り入れたこのシリーズ……」
○○「試み?」
グレアム「何だと思う?」
グレアム君の深く澄んだ瞳が、ぐっと私の顔に近づき……
○○「っ……」
心の奥を覗き込むかのように、近くで強さを増した。
どきりと鼓動の音が強くなる。
○○「あ、えっと……」
グレアム「わからないなら教えてあげるよ。 なんと……冒険要素が取り入れられている! 苦心したが……俺の才能の幅が広がった気がするよ。新たな読者も増える……だろう」
自信たっぷりなその様子に、やや気圧されながらも……
○○「すごく楽しみになってきました。仕上がったら、絶対読みますね」
グレアム「うん、すぐにお前に本を贈ろう」
輝く瞳は吸い込まれるようにまっすぐで、グレアム君の小説に対する熱がはっきりと感じられた。
…
……
それから、私はグレアム君と一緒に、今回の事件を調査することになった。
○○「……いいんですか?」
グレアム「ああ。助手は必要だからね。それに、危険がまだひそんでいるかもしれない。 俺と一緒……なら、大丈夫だから」
○○「え……」
こちらを見ずに、グレアム君はぽつりとつぶやいた。
(でも、人が消えてしまったなんて……いったい何があったんだろう)
私の隣で、アトラクションの設計図に視線を落とす彼の横顔を覗き見る。
グレアム「……」
真剣な面持ちで眼鏡をかけ直すグレアム君の仕草に、なぜだかドキリと跳ねた…―。