闘技場では、イリアさんの魔術の披露が始まろうとしていた。
ミヤ「・・・・・・」
○○「あ・・・・・・」
イリアさんが呪文を唱えると、光り輝く青い粒子が大きな塊となって空に昇っていき・・・・・・
水は馬になり空を駆け巡ったかと思うと、鳥に変わる。
集まった人達を祝福するように空を飛びまわると、鳥は水しぶきとなり消えていった。
(すごい・・・・・・)
観客から割れんばかりの拍手と歓声が沸き上がる。
ミヤ「すげーな、イリア・・・・・・」
真剣な表情で舞台を見つめていたミヤが、ぽつりとつぶやく。
(ミヤ・・・・・・)
ミヤ「オレ、そろそろ行かないと」
拍手がやまない中、ミヤは闘技場へと向かう。
○○「ミヤ、頑張って!」
拍手に負けないくらいの大きな声で叫ぶと、ミヤは手を振りながら駆けて行った。
(どうか、ミヤの練習の成果が出ますように・・・・・・)
ミヤ「・・・・・・」
舞台に立ったミヤが両手を高く上げると・・・-。
(わあ・・・・・・!)
手から上がった火の玉が空で弾け、美しい花を咲かせる。
けれど・・・・・・
ミヤ「・・・・・・!」
花火は空で大きな爆発に変わり、観客から次々に驚いたような声が上がっていく。
ミヤ「・・・・・・っ」
見ると、ミヤは苦しげに眉根を寄せていた。
(もしかして、失敗・・・・・・?)
そう思った次の瞬間・・・・・・
(・・・・・・えっ?)
爆発は空に上がった水しぶきによって抑えられ、7色の花火が水と遊ぶように跳ねては消えていく。
その幻想的な炎と水の魔術に、観客から歓声が上がった。
(何が起こっているの?)
ミヤ「・・・・・・!」
ミヤは驚いた顔で空を見上げていたものの、しばらくすると彼の口元に笑みが浮かぶ。
(・・・・・・ミヤ?)
大歓声の中、ミヤは深々とお辞儀をすると、すぐに私のところへと駆けて来た。
ミヤ「まいったなぁ・・・・・・」
言葉と違い、ミヤの声は明るい。
○○「ミヤ、さっきのって・・・・・・」
ミヤ「失敗しそうだったところで、イリアが魔術を使って助けてくれたんだ」
○○「イリアさんが!?」
ミヤ「まったく、いいところ持っていき過ぎ! ・・・・・・でも、助かった。 やっぱり格好いいな、イリアは・・・・・・」
ミヤは照れながらも、嬉しそうに髪を搔き上げる。
ミヤ「オレ、イリアのことを意識し過ぎてたんだなー。 どっちの魔術がすごいとか、そういう問題じゃないのにね」
(ミヤ・・・・・・)
ミヤ「まあ、どっちにしろ○○ちゃんに格好いいところを見せられなかったけど」
ミヤは肩をすくめて自嘲した。
○○「・・・・・・格好いいと思う」
ミヤ「えっ・・・・・・」
○○「イリアさんのこと、格好いいって言えるミヤ・・・・・・格好いいと思うよ。 それに、二人で完成させた魔術、すごく素敵だった」
ミヤ「○○ちゃん・・・・・・」
○○「えっ・・・・・・?」
ミヤは私の手を取ると、優しく握りしめ・・・・・・
真剣な表情を浮かべながら、こちらをまっすぐに見つめてくる。
○○「ミヤ・・・・・・? あの、どうして・・・・・・」
(そんな瞳で見つめられたら・・・・・・)
手から伝わってくる熱と彼の眼差しに、鼓動がますます高鳴っていく。
ミヤ「今度は、格好いい姿を見せたい! いや、絶対見せるから! だから・・・・・・待っていてくれるかな?」
ミヤはなおも真剣な表情で私を見つめ・・・・・・
青く輝くまっすぐな瞳に、吸い込まれてしまいそうになる。
○○「ミヤ・・・・・・」
うるさいぐらいに高鳴る鼓動を落ち着かせながら、私がミヤに返事をしようと口を開いたその時・・・・・・
ルーガ「ミヤ様! すごく綺麗だったよ!」
ルーガ君が、息を切らしながら駆けて来た。
ミヤ「・・・・・・ルーガ、実はあの魔術はイリアが助けてくれたから成功したんだ」
ルーガ「イリア様が?」
ミヤ「うん。でも、次はオレがイリアを助けられるように頑張ろうと思う。 そのためにも、これからもいっぱい練習しなきゃだけどね」
ルーガ「・・・・・・ぼくも、モーガを助けられるようになりたい。ミヤ様が頑張るなら、ぼくも頑張る!」
ルーガ君の瞳に、強い光が宿る。
ミヤ「ああ。どっちが先に兄弟を助けられるようになるか、競争だ!」
ミヤが頭を撫でると、ルーガ君は嬉しそうに声を上げた。
(二人とも、楽しそう)
辺りに、穏やかな空気が流れる。
すると・・・・・・
ミヤ「・・・・・・○○ちゃん」
○○「さっきの答え・・・・・・後で伝えるね」
照れながら小さくつぶやくと、ミヤが満面の笑みを浮かべた。
(私の好きな笑顔だ・・・・・・)
(優しくて、温かくて、周りの人達を明るくする太陽みたいな笑顔・・・・・・)
胸の奥に広がる温もりを感じながら、私も彼につられるように笑っていた。
おわり。