魔術の祭典、当日・・・-。
魔術が披露される闘技場には、王家一族をはじめ、他国の招待客や民衆達も集まっていた。
(ここで、ミヤとイリアさんは魔術を披露するんだ)
(こんなにも大勢の人数の視線を、いっせいに浴びながら・・・・・・)
想像しただけで、鼓動が早まっていく。
すると・・・・・・
ルーガ「お姉ちゃん!」
街の人達の中から、ルーガ君が元気よく手を振っていた。
ルーガ「ミヤ様、どんな魔術を披露するのかな~」
男の子「ぼくは、イリア様の方が楽しみ! きっとすごい魔術を見せてくれるよ」
ルーガ「ミヤ様だって、すごいよ!」
(ルーガ君・・・・・・)
魔術の練習をしていたミヤの表情が脳裏を過る。
ー----
ミヤ「・・・・・・っ、失敗だ。 ・・・・・・駄目だな」
ー----
ミヤの苦悩に満ちた表情が、頭から離れない。
(ミヤ、大丈夫かな・・・・・・?)
ミヤの様子が気になってしまい、控え室へと向かった。
・・・
・・・・・・
ミヤは、窓際に立って外の様子をじっと見つめていた。
○○「・・・・・・ミヤ?」
ミヤ「あっ、○○ちゃん・・・・・・」
振り返ったミヤは、いつになく硬い表情をしている。
(ミヤ、やっぱり緊張しているんだ・・・・・・)
ミヤが手に持っている魔術書は、ぼろぼろになっている。
それは、まさに彼の努力の量を表していた。
ミヤ「結局、練習で一度も成功することができなかったんだ。 だから、少し弱気になっちゃって・・・・・・情けないね、オレ」
○○「魔術書がぼろぼろになるくらい、ミヤは一生懸命練習したんだよね。 だから、もっと自分に自信を持って」
ミヤ「・・・・・・○○ちゃん」
しょんぼりとうな垂れていたミヤが、魔術書をぎゅっと握りしめた。
ミヤ「・・・・・・そうだよね。ルーガも見に来てくれているし、オレ頑張るよ!」
ミヤの瞳に、微かに光が射してくる。
ミヤ「あのさ、○○ちゃん・・・・・・笑ってくれるかな?」
○○「笑う?」
(どうして・・・・・・?)
疑問を抱きながらも、言われるがままに私は笑ってみる。
すると、ミヤもつられるように笑顔になった。
ミヤ「ありがとう、○○ちゃん。 やっぱり、○○ちゃんの笑顔は元気になる。どんな薬より効くね」
(ミヤ・・・・・・)
ミヤが、壁にかけられている時計に視線を移した。
ミヤ「そろそろ、イリアが魔術を披露する頃だね。 ・・・・・・イリアは、どんな魔術をするのかな」
(やっぱり、イリアさんの魔術が気になるのかな?)
私とミヤは、イリアさんの魔術を見るために闘技場へと向かった。
ふと、彼の横顔に視線を移す。
ミヤ「・・・・・・」
ミヤのまつ毛は微かに震えていて、私はそんな彼の隣をただ歩くことしかできなかった・・・-。