魔術の祭典、当日…―。
控え室にやってきた○○ちゃんと、一緒に話をしていると……
ミヤ「○○ちゃんには、いつも情けないところばっかり見せちゃってるし……。 ほら、オレはイリアみたいに格好よくできないからさ」
○○「そんなことない……!」
(えっ?)
すぐさま否定をする○○ちゃんに、オレは思わず目を開く。
○○「ミヤは、格好いいよ」
(か、格好いい!? ○○ちゃん、そんなふうにオレのこと……)
(……やばい。ものすごく嬉しい)
ミヤ「ありがとう。オレ、頑張るね!」
胸の奥から、どんどんと喜びが溢れてくる。
(○○ちゃんの言葉にはどんな魔術よりも強い力が宿ってる)
(……不思議だな)
溢れた喜びは、勇気に変わり……
(今なら、誰にも負けない気がする)
オレは自分の出番を、待ち遠しいとすら思っていた。
…
……
オレの魔術が、大成功を収めた後……
(やった……!)
大きな拍手と歓声を送ってくれる皆に、オレは深くお辞儀をする。
そうして顔を上げた時、飛び跳ねて喜ぶルーガの姿が見えて……
(ルーガ、やったよ!)
ルーガにピースをしたオレは、○○ちゃんの方へと向き直る。
(○○ちゃん! オレ、やったよ!)
オレは喜びのままに、○○ちゃんの元へと走った。
すると……
○○「すごい……ミヤ、すごいね! 本当に綺麗だったよ」
○○ちゃんが、声を弾ませている。
ミヤ「○○ちゃんに喜んでもらえて嬉しいな」
(今日なら……)
(今日なら、キミにオレの気持ちを伝えられる気がする……!)
拳をぎゅっと握りしめた後、オレは○○ちゃんを見つめた。
ミヤ「今日こそは、はっきり言えそうな気がする」
○○「えっ……」
ミヤ「オレ、○○ちゃんのこと……好きだ!」
○○「……!」
(やっと言えた)
(キミを好きになってから、ずっと伝えたかった想いを……)
○○ちゃんは、オレから目を逸らしたり嫌がるような素振りを見せなかったものの、その表情には戸惑いの色が浮かんでいた。
ミヤ「びっくりさせてごめんね。でも今日なら、ちょっと大胆に言ってもいいかな……なんて」
○○「……ミヤ」
ミヤ「だ、駄目かな!?」
(やっぱり、オレなんかじゃ……)
○○「う、ううん、駄目なんかじゃない! ミヤの気持ち、嬉しいよ」
ミヤ「○○ちゃん……」
オレは、○○ちゃんの頬にそっと触れる。
そんなオレを、彼女はじっと見つめていて……
(キス……しても、いいかな……?)
吸い寄せられるように、○○ちゃんへと唇を近づける。
だけど……
(……やっぱり、駄目だ)
ミヤ「……」
オレは○○ちゃんの唇ではなく、額にキスをした。
○○「え……?」
ミヤ「あっ、いや、その……。 今は皆が見てるから……って思ってさ、だけど……。 なんだか、照れちゃうね」
顔中が熱を持ち、胸もドキドキと落ち着きなく騒いでいる。
すると……
○○「うん、そうだね」
嬉しそうに答える○○ちゃんを、たまらなく愛おしく思う。
だけど、それと同時にどうしようもないほどの恥ずかしさが込み上げてきて……
ミヤ「あっ……! オレ、イリアに魔術すごかったなって、言ってこようかな」
○○ちゃんの返事を聞くことなく、オレはイリアの元へと駆け出す。
(くそ~! やっぱりオレ、すっごく格好悪いかも)
(だけど……)
走りながら、そっと唇に触れる。
ミヤ「……もっともっと努力して、成長して見せる。 キミのことをしっかりリードできるような、格好いい男に……」
(魔術の腕も、男としての魅力も磨いて……キミにふさわしい男になって見せるよ)
ミヤ「オレのことを受け入れてくれたキミのために、絶対……」
オレは、これから訪れるであろう彼女との幸せな未来に期待を寄せながら……
今なお多くの歓声に包まれる会場を駆け抜けたのだった…―。
おわり。