(プレッシャーどころか、イリアさんの魔術を楽しんで見てる……)
(ミヤ……格好いいな)
彼の余裕のある表情に、頼もしさを感じる。
ミヤ「よし、オレも負けずに頑張るぞ!」
ミヤは、胸の前で拳をぎゅっと握りしめた。
ミヤ「行ってくるね、○○ちゃん」
白い歯を見せながら、ミヤは闘技場へと向かって行った。
…
……
男性「ミヤ様~!」
女性「ミヤ様、頑張って~!」
ミヤが舞台に立つと、観客から声援が上がる。
イリアさんの時の厳かな雰囲気から一転、闘技場は和やかな雰囲気に包まれていた。
ミヤ「……」
ミヤはにっこりと微笑むと、両手を高く上げる。
すると手のひらから大きな火の玉が浮かび上がり、空に向かって7色の光を放った。
火の玉は音を立てて弾け飛ぶと、滝のように流れ落ちていく…―。
(……すごい、綺麗)
そこには、ミヤの猛練習の成果がすべて現れていた。
一瞬の静けさの後、闘技場が人々の大歓声と拍手に包まれ、
貴賓席にいる国王様と王妃様は、驚いたように目を丸くしていた。
(ミヤ、すごい……)
ミヤは深々とお辞儀をした後、飛び跳ねて喜ぶルーガ君にピースをし……
満面の笑みを浮かべ、私の元へと駆けて来る。
○○「すごい……ミヤ、すごいね! 本当に綺麗だったよ」
いくつもの賛辞を並べても、今の感動を言い表せない。
ミヤ「○○ちゃんに喜んでもらえて嬉しいな」
ミヤは目を細めて微笑むと、すぐに顔を引きしめる。
(……ミヤ?)
ミヤ「今日こそは、はっきり言えそうな気がする」
○○「えっ……」
いつもより落ち着いた彼の声に、胸の奥がじわりと熱くなっていく。
ミヤ「オレ、○○ちゃんのこと……好きだ!」
○○「……!」
ミヤはまっすぐに私の瞳を見つめてくる。
私は、それを逸らすことができない。
(今日のミヤは、いつもと少し違う……)
ミヤの言葉が、私の心にじんと響く。
(ミヤの気持ち……嬉しいな)
ミヤ「びっくりさせてごめんね。でも今日なら、ちょっと大胆に言ってもいいかな……なんて」
○○「……ミヤ」
ミヤ「だ、駄目かな!?」
○○「う、ううん、駄目なんかじゃない! ミヤの気持ち、嬉しいよ」
ミヤ「○○ちゃん……」
ミヤの手のひらが、私の頬に優しく触れる。
見つめ合うと、時が止まったような静寂が訪れた。
○○「……!」
そっと近づくミヤの顔に、胸の鼓動が激しくなっていく。
(ミヤ……)
ミヤの吐息が唇にかかり、私は目を閉じようとする。
けれど……
ミヤ「……」
ミヤは顔をずらして、私のおでこにそっと優しいキスを落とした。
○○「え……?」
ミヤ「あっ、いや、その……。 今は皆が見てるから……って思ってさ、だけど……。 なんだか、照れちゃうね」
ミヤは、耳まで真っ赤にして微笑んだ。
○○「うん、そうだね」
照れている彼を見ていると、愛おしさが込み上げてくる。
ミヤ「あっ……!」
○○「……?」
ミヤ「オレ、イリアに魔術すごかったなって、言ってこようかな」
真っ赤な顔のまま踵を返し、ミヤはイリアさんの部屋へと駆けて行く。
(ミヤ……)
(頑張って練習して、本当によかったね)
大きな試練を乗り越えた彼の背中は、以前よりも凛々しく頼もしいものに見えた…―。
おわり。