走り去るルーガ君を見ていると、彼の両親が大きなため息を吐いた。
モーガ兄弟の父親「まったく、あの子は……ルーガも、モーガを見習って欲しいんですけどね」
モーガ兄弟の母親「本当に……ちっとも勉強をしないんだから」
ミヤ「でも、この前ルーガは進んで花壇の掃除をしてくれていて、商店の人に褒められてたよ」
ミヤは目を細めながら、ルーガ君を褒める。
モーガ兄弟の父親「ミヤ様に褒めていただけるなんて恐縮です。でも、あの子はもう少しモーガを……」
その後もずっと、ご両親はルーガ君とモーガ君を比較し続けていた。
ミヤ「……」
ミヤの表情に影が差す。
(ミヤ、もしかして……)
彼の心の中に過ぎるものに気づき、胸がざわめく。
○○「……ミヤ?」
私が顔を覗き込むと、ミヤはハッとしたような表情を浮かべた。
ミヤ「ごめん、少しぼんやりしちゃった」
彼の無理やり作った笑顔が、私の心を締めつける。
ミヤ「……じゃあ、オレ達はそろそろ行くね」
少し気まずそうに、ミヤが街の人達へと別れを告げる。
そんな彼と共に、私は森へと向かった…―。
…
……
森までの道、ミヤの口数はいつもより少なかった。
ミヤ「……」
(ミヤ、やっぱり元気がないみたい……)
明るく元気ないつもの彼の姿を思い返すと、胸がちくりと痛む。
(だけど、そうやって振る舞うのは周囲を思いやってのことで……)
(ミヤは、いつも自分の気持ちを言えずにいる)
(ミヤが抱えている気持ちを、少しでも軽くできれば……)
○○「あのね、ミヤ……私はミヤのいいところをたくさん知ってるよ」
ミヤ「えっ……」
○○「それに、ミヤが傍にいるだけで元気になるし! つまり、その……」
思っていることを上手く伝えられず、もどかしくなってしまう。
○○「つまり……、私はそんなミヤが素敵だと思っていて……」
ミヤ「……○○ちゃん」
ミヤが驚いた顔で私を見つめる。
(突然こんなことを言われても、困るよね……)
途端に恥ずかしくなり、頬が熱くなってくる。
けれど……
ミヤ「ありがとう、○○ちゃん。 ○○ちゃんの優しさが、すごーく伝わったよ。 心配かけちゃったよね。ごめんね。オレは大丈夫だから……ね?」
ミヤが、弾けるような笑顔を見せた。
(よかった……)
思いが伝わり、ほっと胸を撫で下ろしていると……
??「うわあああっ……!」
森の奥から、叫び声が聞こえてきた。
(あの声は……?)
ミヤ「……ルーガ!?」
○○「ルーガ君に、何か……」
ミヤ「森の奥から? ……行こう! ○○ちゃん!」
私達は声の方へと、急いだ…―。