部屋の扉を開けると、ミヤの目の前で無数の火花が縦横無尽に飛び散っていた。
○○「もしかして、今の火花ってミヤの魔術?」
ミヤ「びっくりなお出迎えになっちゃったね。ごめんね、○○ちゃん」
火花はミヤが魔術で出したものだった。
○○「ミヤ、火傷はしてない? 大丈夫?」
ミヤ「うん、大丈夫だよ。○○ちゃんは優しいね」
怪我をしていないことがわかり、私はほっと胸を撫で下ろす。
ミヤ「魔術書どおりにやったはずなんだけどな~」
机の上にある魔術書に視線を移しながら、ミヤは困ったように眉根を寄せた。
○○「さっきの火花、もしかして祭典で披露する魔術?」
ミヤの言葉に、今回の来訪の目的を思い出して尋ねると…―。
ミヤ「うん……実は、オレにとってちょっと背伸びした魔術なんだ。 難しい技だけど、せっかくの機会だし、挑戦してみようと思って。 それに……○○ちゃんも見に来てくれるしね!」
ミヤは照れくさそうに視線を逸らした。
○○「難しい技に挑戦するなんて……すごいね、ミヤ」
ミヤ「そうかな……すごいかな?」
ミヤは、耳まで赤くしてうつむいてしまった。
(でも……)
私は、ミヤの目の前で弾け飛んでいた花火を思い出す。
○○「さっきの魔術、すごく危険そうだけど……大丈夫?」
ミヤ「う~ん、放電の応用だからね。でも、ちょっと頑張ってみたいなって思って。 祭典では、イリアも魔術を披露するし……。 きっと皆はイリアの魔術を楽しみにしているけど、オレも皆を楽しませたいなって思って」
ミヤの言葉に、一瞬だけ暗いものが過る。
(ミヤ……?)
けれどすぐに、悪戯好きな子どものように微笑んだ。
ミヤ「あっ、このことは皆には秘密にしているんだ。だから、二人だけの秘密だよ」
○○「うん、わかった」
ミヤは、部屋の中をぐるりと見回す。
ミヤ「……でも、もう少し広い場所で練習した方がいいかな」
(確かに、部屋の中で魔術の練習をするのは危険かも……)
ミヤ「部屋がめちゃくちゃになったら、城の皆に怒られそうだしね……」
ミヤは顎に手をあてながら、難しそうな顔で考え込んでしまった。
○○「……森はどうかな?」
ミヤ「森で練習か……いいね! それがいい! さすがは○○ちゃん!」
広々とした森の中で、魔術を練習するミヤを想像してみる。
(傍で、その様子を見ていたいな……)
○○「もし邪魔じゃなかったら、私も一緒に行ってもいい?」
ミヤ「邪魔だなんて……! 一緒に来てくれるとすごく嬉しいよ」
太陽のように明るい笑顔が、私の心の奥まで優しく照らす。
日向ぼっこをしているような心地よさが、私を包み込んでいた…―。