魔術の祭典が終わり、自室へと戻ってきた後…―。
○○「……もし、ミヤさんが怒っているのなら私も一緒に謝ります」
イリア「○○様が?」
○○「はい。だから自分を責めないでください……!」
ミヤの顔に泥を塗ってしまったと自己嫌悪に陥る私を、○○様が懸命に励ましてくれる。
○○「ミヤさんのことを思ってしたことだって、きっとわかってくれます!」
イリア「○○様……」
(優しいな、貴方は)
(私のために、こんなに真剣に……)
○○様がかけてくれた言葉の数々が、胸にじんわりと染み込んでいく。
そんな彼女に、私は……
イリア「ありがとうございます……○○様」
○○「え……?」
イリア「貴方のおかげで、落ち着きました」
(心が、こんなにも軽くなった)
(私一人だったら……いや、他の誰かが傍にいたとしても乗り越えられなかったと思う)
(他の誰でもない、貴方だから……)
そう思いながら、ふと顔を上げたその時……
イリア「おや? あれは……?」
私は、机の上に見覚えのないメッセージカードが置かれていることに気づく。
(なんだ? あんなもの、朝はなかったはず……)
不思議に思い、カードを手に取ると……
『いいところ持っていき過ぎ! でも、ありがとう』
イリア「!」
カードには、差出人が書かれていなかったものの…―。
(……ミヤ)
○○「イリアさん、これって……」
イリア「はい……ミヤからです」
見慣れた文字を読み返す度に、胸を覆っていた靄が遠ざかっていく。
(貴方の言う通りだった)
(私は、どうしてあんなにも思い悩んでいたのか……)
晴れやかな気持ちで、ミヤからのメッセージカードをしまう。
そして……
イリア「○○様!」
○○「っ……!」
イリア「貴方の言う通りでした。ミヤはわかってくれていました!」
○○「よかったですね……イリアさん」
喜びを爆発させる私に、○○様が優しく語りかけてくれる。
イリア「はい。貴方のおかげです」
○○「私は何も……」
イリア「いいえ。貴方がいてくれたから私は……」
○○「イリアさん……」
彼女を抱く腕に、私はさらに力を込めた。
イリア「覚えていますか? 昨日貴方が言ってくれたことを。 貴方は私を励ましてくれた。そして、私の心の内を教えてくれた……」
○○「そんな……大袈裟ですよ」
イリア「いいえ……」
(大袈裟なんかじゃない……)
(私がこうしていられるのは、まぎれもなく貴方のおかげなのだから)
彼女の奥ゆかしさに、胸に秘めた想いがどんどん加速して……
イリア「貴方は不思議な人ですね。私が隠そうとしていた心にすぐに気づいてしまう。 私の心を解きほぐして、素直に向き合えるようにしてくれた。 そして、いつの間にか貴方は私の心の中にいる」
溢れる想いが、次々に言葉へと変わっていく。
(しかし……今は、ここまでです)
(今はまだ、その時ではありませんから……)
私はわずかに体を離して、両手で彼女の頬を包み込んだ後……
○○「っ……!」
額にそっと唇を寄せると、○○様は驚いたような表情を浮かべた。
イリア「この想いには、まだ気づかないでください。 いつか改めて、私から言いますから」
(しかるべき時が来たら……必ず)
(私が一人の男として成長し、貴方の心の中に私の居場所ができたその時に……)
(……愛している、と)
おわり。