魔術の国・ソルシアナ 陽の月…-。
暖かい日差しに包まれるある日の昼下がり、この国で行われる魔術の祭典に招待された私は、ソルシアナ城へと向かっていた。
(魔術か……)
―――――
イリア『我が国では国民の約半数が魔術を使えるのですよ。 王家に生まれ魔力を持つ者は、幼い頃から魔術のあり方を解いた学問を学ぶことになっているのです』
―――――
第一王子であるイリアさんは、魔術の腕も高いことから国の期待を一身に背負っている。
(あれも全部魔術なんだよね)
店先に舞う色とりどりの花びらや、虹色に輝く噴水…-。
(祭典では、どんな魔術が見られるんだろう……?)
私はまだ見ぬ祭典に思いを馳せつつ城へと足を運ぶ。
…
……
ソルシアナ城にやって来てから、少しの後……
(イリアさんにお会いするのは久しぶりだな……)
イリアさんの元へと案内していただきながら、私は彼との再会に胸を躍らせる。
そうして廊下を進んで行くと……
(どうしたんだろう?)
先ほどから城の人達が私の横を忙しそうに行き交っている。
その姿を不思議に思いながら見つめていた、その時だった。
イリア「〇〇様」
廊下の向こうから足早にやって来たイリアさんが、端正な顔に優しい笑みを浮かべている。
〇〇「イリアさん」
イリア「お久しぶりです。またお会いできるのを楽しみにしておりました」
イリアさんは丁寧にお辞儀をすると眼鏡の奥の瞳をより一層細める。
〇〇「私もです……でも、なんだかお忙しい時に来てしまったみたいで」
イリア「ああ、気にしないでください。皆、祭典の準備に追われているだけですから。 今度行われる祭典は、我が国の伝統行事ですからね。 特に今年は、私達の魔術披露に、例年以上に注目が集まっているようで……」
(私達? ということは……)
〇〇「じゃあ、イリアさんも何か魔術を?」
イリア「はい。私の魔術は…-。 そうです!」
話の途中で何かを思いついたのか、彼はきらきらと輝くような笑顔を私に向けた。
〇〇「イリアさん?」
イリア「よろしければ〇〇様も一緒に行きませんか?」
〇〇「え?」
イリア「私と一緒に、新たな魔術を求める旅に」
(旅……?)
彼の透き通るような青い瞳を、私はただ見つめ返すことしかできなかった…-。