昼下がりの太陽が地面に木漏れ日を作っている…―。
○○「ハクさん……すごいですね」
その地面に倒れている盗賊を見て、○○が呟いた。
突如として現れた盗賊を全員倒したことを確認し、俺は息をつく。
ハク「……そうか?」
(これでも一国の王子なのだから、剣術のたしなみくらいは……)
(だが、何だ? 胸の奥がくすぐったい)
○○「守ってくれて、ありがとうございます」
(なんだこれは……)
彼女が俺に笑顔を向けると、胸の奥がざわめいた。
気がついた時にはキスをしそうになっていて……俺はそのことに心底驚く。
○○「……っ!」
彼女の頬が染まっていく。
(……何をしているんだ俺は)
目を閉じ深く息を吸った。
(今日の俺はどうかしている)
(きっと、熱でもあるのだろう)
(城に帰ったら、医師に診てもらわなければ)
ハク「城へ、戻るぞ」
何とか声は震えなかったものの、胸はドキドキと音を立てている。
○○「……はい」
城への道を歩きながら、動悸を治めようと景色に目を向けた。
…
……
城へ戻ると、俺は壁に手をつき息を整える。
(動悸が治まらない。早く医師を)
○○「ハクさん……?」
気遣わしげにそう言って、彼女が俺の手に触れた。
その時…―。
ハク「……!」
胸が跳ね、ほとんど息が止まりそうになる。
俺は大きく息を吸った。
(……違う。病などではない)
(何だと言うんだ、一体)
心の赴くままに、俺は彼女の腕を引く。
○○「ん……っ」
気がついた時には、キスをしていて……
ハク「……この気持ちは何だ」
(胸が痛いんだ……)
○○「……っ」
ハク「お前に触れたい、と思うようになった」
(少し手が触れただけで自分を抑えられなくなった)
ハク「お前が誰かに傷つけられるのも嫌だ」
(思い出すだけで気が狂いそうだ)
そっと彼女の頬に手を触れると、胸が大きく跳ねる。
○○「ハクさん……?」
ハク「お前がつくったクッキーが好きだ……でも、それとは違う感じだ。 それよりももっと……熱い」
彼女の首の後ろを引き寄せて……
○○「ん……っ」
今度は深くキスをした。
彼女の眉が微かにひそめられたように見えて、俺は不安に襲われる。
ハク「……嫌だったか?」
○○「……」
彼女は、小さく、でもはっきりと首を振る。
ハク「じゃあ、お前も俺と同じ感情なのか?」
心の底からホッとして、彼女に尋ねた。
ハク「……俺は、お前に触れていたい」
○○「私は……。 私も、同じ気持ちです……」
ハク「……そうか」
(なぜこんなに安堵しているんだ)
(なぜ……)
答えを探すように彼女を抱きしめる。
(ああ、そうか。わかった)
ハク「これが、愛するという気持ちか」
(愛する……なんと胸を暖かくする感情だろう)
ハク「○○……」
壁に手をついて、彼女を壁と俺の間に閉じ込める。
顎を持ち上げ瞳を覗き込むと、胸の奥から愛おしさがこみ上げてきた。
(……愛してる)
(愛してる)
胸の中で繰り返してみる。
その言葉は胸の奥にすとんと落ちて、俺の心を芯から暖めていった。
(ああ、そうか)
(俺はずっとこの感情に出会いたかったんだ)
(いや、お前に……)
ハク「逢いたかった」
○○「え……?」
(やっと、巡り会えた)
ゆっくりと彼女の唇にキスを落とす。
唇を舌で割り、彼女の吐息を奪った。
(愛しい人……)
(俺は、お前に逢う為に生まれてきたんだ)
唇を解放し、彼女の瞳を見つめる。
瞬きを繰り返すその瞳の中に、微笑む俺がいた…―。
おわり