ハクさんと城へと戻った後…ー。
ハクさんの部屋で、うさぎの手当てをすることになった。
(すごい、本がたくさん……)
まるで図書館みたいなハクさんの部屋に、書物の香りが微かに漂っている。
ハク「これでいいだろう」
ハクさんは、慣れた手つきでうさぎの脚に包帯を巻いた。
ハク「お前……完全に治るまで、この部屋にいるか?」
うさぎはその言葉に答えるように、耳をぴくんと動かした。
ハク「わかった……」
ぽつりと言って、ハクさんがそっとうさぎの頭を撫でる。
(よかった……)
○○「ハクさん、ありがとうございました。じゃあ、私はこれで……」
そう言ってハクさんの部屋を出ようとすると……
ハク「おい」
突然に呼び止められて、思わず勢い良く彼の方を振り返ってしまう。
○○「ど、どうしたんですか……?」
ハク「昨日のあれ、また食べたい」
(あれって……?)
今度は私が首を傾げていると、ハクさんが静かに言葉を発した。
ハク「お前が作ってきた、クッキー」
(あっ……)
思いも寄らないハクさんの言葉に、胸が跳ねる。
○○「クッキー、お好きなんですか?」
私の質問に、ハクさんはまた考え込んでしまった。
ハク「これが……好きという感情か? よくわからないが……また、食べたいと思う」
○○「はい……ありがとうございます!」
嬉しくて、大きな声が出てしまう。
ハク「なぜ、礼を言う?」
○○「だって、嬉しくて」
ハク「そうか……」
ハクさんが、静かに微笑んでくれる。
○○「今度は、ドライフルーツも入れてみますね!」
ハク「……ああ、頼む」
ハクさんの部屋を出た後…ー。
(嬉しい……私のクッキーを、気に入ってくれたんだ)
(ハクさんは他に、好きなものはあるのかな?)
ハクさんの微笑みが、私の胸を驚くほどに弾ませていた…ー。
翌日…ー。
私はさっそく、クッキーを作ってハクさんの部屋を訪れた。
(調理場がお借りできて良かった)
ハクさんの部屋をノックしようとすると…ー。
ハク「……」
○○「ハクさん……!」
ドアが静かに開き、ハクさんが姿を見せた。
ハク「……どうした?」
私を見下ろすハクさんの長い髪が、彼の頬にさらりとかかっている。
○○「あの、どこかへ行かれるんですか?」
ハク「本を読みに、森へ行くところだ。 お前も来るか?」
(嬉しい……誘ってくれた……)
○○「はい! ……あ、そうだ」
私は、持ってきたクッキーをハクさんに見せる。
○○「昨日、食べたいって言ってくれてたので……」
ハク「随分、早いんだな」
ハクさんは、今度は確かな笑顔を私に向けてくれた。
胸の奥でトクンと音が鳴る。
(どうしてだろう、ハクさんの笑顔がもっと見たいって思う……)
胸の奥で、甘い感情が生まれ始めていた…ー。