第1話 静寂の中……

太陽の光が森に穏やかに降り注ぎ、柔らかな空気に包まれる。

ハク王子の国・リヴァエルから招待を受け、私は城へと続く森の道を歩いていた。

(静かな森……)

耳を澄ますと、時折吹く風に葉を揺らす、木々のざわめきだけが聞こえてくる。

森を進んでいくと、枝いっぱいに葉をつけた大きな木に行き当たった。

(……なんて大きな木)

その木陰に、見覚えのある長い髪の男性が座り込んでいる。

(ハク……さん?)

ハクさんは、息もしていないのではと思うほど静かに、手にした本に視線を落としている。

○○「ハクさん……?」

ハク「……」

ハクさんに呼びかける私の声は、森の静寂に吸い込まれていく。

(……集中しているのかな)

(お邪魔しちゃ悪いし……読み終えるまで待っていよう)

……

どれくらい時間が経ったのか…ー。

ハクさんは、ふと私に目をやり、静かに本を閉じた。

ハク「……いたのか」

囁くような声が、私に向けられる。

○○「あっ、はい……」

ハク「……」

それきり、ハクさんはまた黙り込んでしまう。

沈黙に耐えきれず……

○○「あの……」

ハク「ああ……城の者が招待したのだったな」

声をかけると、小さくまばたきをしてそう言った。

ハク「……来い」

ハクさんは静かに立ち上がり、私に背を向けて歩き出した。

(……静かな人)

足音さえ立てない彼が、なぜだかそのまま消えて行ってしまいそうに思えて……

私は懸命に、彼の背中を追った…ー。

 

 

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