太陽の光が森に穏やかに降り注ぎ、柔らかな空気に包まれる。
ハク王子の国・リヴァエルから招待を受け、私は城へと続く森の道を歩いていた。
(静かな森……)
耳を澄ますと、時折吹く風に葉を揺らす、木々のざわめきだけが聞こえてくる。
森を進んでいくと、枝いっぱいに葉をつけた大きな木に行き当たった。
(……なんて大きな木)
その木陰に、見覚えのある長い髪の男性が座り込んでいる。
(ハク……さん?)
ハクさんは、息もしていないのではと思うほど静かに、手にした本に視線を落としている。
○○「ハクさん……?」
ハク「……」
ハクさんに呼びかける私の声は、森の静寂に吸い込まれていく。
(……集中しているのかな)
(お邪魔しちゃ悪いし……読み終えるまで待っていよう)
…
……
どれくらい時間が経ったのか…ー。
ハクさんは、ふと私に目をやり、静かに本を閉じた。
ハク「……いたのか」
囁くような声が、私に向けられる。
○○「あっ、はい……」
ハク「……」
それきり、ハクさんはまた黙り込んでしまう。
沈黙に耐えきれず……
○○「あの……」
ハク「ああ……城の者が招待したのだったな」
声をかけると、小さくまばたきをしてそう言った。
ハク「……来い」
ハクさんは静かに立ち上がり、私に背を向けて歩き出した。
(……静かな人)
足音さえ立てない彼が、なぜだかそのまま消えて行ってしまいそうに思えて……
私は懸命に、彼の背中を追った…ー。