得体の知れない鳥の鳴き声が響くなか、夜の庭を走り私はレオニーの元へ駆け寄った。
なんとか人形兵を追い払ったはいいけれど、レオニーはすっかり怯えている。
レオニー「うう……も、もう大丈夫なのか? アイツらどこかに消えちまったのか?」
〇〇「うん、大丈夫。レオニー、怪我はない?」
レオニー「あ、ああ……大丈夫だ」
膝についた泥を払い、レオニーが立ち上がる。
その目が感心したように、私に向けられた。
〇〇「どうかしたの?」
レオニー「いや、アンタ、そんな小さいのに、勇敢なんだなって……」
彼は何かを言いたそうに唇を震わせては、私から目を逸らす。
〇〇「レオニー……?」
様子が気になって、名前を呼ぶと……
レオニー「なあ、〇〇……!」
〇〇「え……!? なっ、何!?」
レオニーはいきなり真剣な目になって、私の両肩を揺さぶった。
レオニー「アンタのその勇気、オレにも少しわけてくれよ! 頼む……! オレ、勇気がどうしても欲しいんだ!!」
〇〇「勇気を? でも……」
戸惑いに口元に手をやるが、彼はまっすぐな瞳で私を見つめてくる。
(どうすればいいんだろう、勇気だなんて……)
しばらく考えてみたものの、方法は思い浮かばない。
レオニー「……」
(レオニー……)
すがるように私を見つめるレオニーを、そのままにはしておけなくて……
レオニー「……っ、〇〇!?」
私は、彼の体をそっと抱きしめた。
軽く彼が身動きして、私の腕の中で、驚いたようにまばたきを繰り返す。
しばらくして…―。
〇〇「どう? 勇気……出た?」
軽い抱擁を終えて、至近距離で彼の顔を見上げる。
レオニー「……」
じっと、切れ長の青い瞳が私を見る。
視線を受け止めると、どうしてか心臓が落ち着きを失くして高鳴った。
〇〇「……駄目だった?」
もう一度彼の問うと、ブロンドの頭が勢いよく左右に振られる。
レオニー「……ううん! そんなことない。 ……体中が熱くて、すごい……!今ならなんだってできそうだ!!」
〇〇「……本当?」
レオニー「おう!」
レオニーは、頼りがいのありそうな笑顔を浮かべて私を見る。
その目には、今までにない強い光が宿っていた。
レオニー「よし、そうとなれば、あの謎の人形兵を退治しないと。 この城をいつまでもヤツらの思い通りになんてさせないぞ!」
〇〇「そうだね、でも無理はしないで」
レオニー「大丈夫だ!」
胸を拳で叩いて、レオニーが深く頷く。
こうして私達は、人形兵退治に向かうことになった。
中庭から見上げた夜の城は、得体の知れない薄気味悪さに包まれていた…-。