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レオニー『○○は絶対に守る……! 勇気はなくたって、弱くたって、この城も、街の人達だって……オレが必ず守るんだ!!』
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あれから、数日……
レオニー「やばい……足がガクガクする」
走り込みを終えたオレは、中庭にあるベンチに勢いよく腰をおろす。
レオニー「強くなるって、本当に大変だな。 けど……」
オレは、ぐっと拳を握る。
(必ず守るって決めたんだ。この城も、街の人達も)
(何より……)
レオニー「○○のことを、守るんだ」
その時、後ろから小さな足音が聞こえた。
○○「レオニー、お疲れ様」
○○はそう言いながら、オレに冷たい飲み物を差し出す。
レオニー「ああ! ありがとな!」
オレは飲み物を受け取ると、一気に飲み干した。
レオニー「はー……生き返る……」
体の火照りをや疲れが、すっと引いていく。
そんなオレを見て、○○が小さく笑った。
レオニー「な、なんだよ。オレ、なんかおかしかったか?」
○○「ううん、そういうわけじゃないよ。ただ、すごく幸せそうな顔をしてたから」
レオニー「ああ、うん。喉がカラカラだったからさ。 今日は、かなりきついメニューをこなしたんだ。だから……」
人形兵と戦ったあの日以来、オレはトレーニングを重ねている。
そんなオレを、○○は優しく見守ってくれていた。
(……だけど)
レオニー「明日からは、一人なんだよな」
○○「え……?」
(あっ! しまった……)
オレは、思わず口を押える。
でも、こぼれてしまった言葉を取り消すことはできなかった。
レオニー「ごめん。オレ、つい……」
○○は明日、国に帰ってしまう。
お互いなんとなく、その話題は避けていたはずなのに……
レオニー「なんか、しんみりしちゃったな。本当にごめん」
○○「レオニー……」
○○が、気まずそうに目を伏せる。
(あー、もう! 何やってんだよ、オレ!)
(笑って送り出すって決めただろ! なのに、なんでこんな空気にしてんだ!)
(今日は、○○と過ごせる最後の日だってのに……!)
オレは、勢いよくベンチから立ち上がった。
レオニー「けど、さ! またすぐに会えるよな?」
しんみりしてしまった空気を打ち払うように、明るく言う。
レオニー「その時までに、ちょっとでも強くなっておくから。 勇気がなくても、強くなくても、皆を守る。そう言ったけどさ。 どっちも、あって困るもんじゃないっていうか……」
オレは、ちらりと○○の腕を見る。
そこには、白い包帯が巻かれていて……
レオニー「……ごめんな」
○○「えっ? 突然、どうしたの?」
レオニー「その傷、さ。オレのせいで……」
○○「そんな。レオニーのせいじゃないよ」
(いや、違う。オレのせいだ)
○○は笑ってくれるけど、オレは自分が許せない。
だから……
レオニー「もうアンタのこと、誰にも傷つけさせないって決めたんだ。 そのためにも、絶対に強くなるって……。 心も体も、誰よりも強くなってみせるって!」
オレは、まっすぐに○○を見つめる。
すると、驚いたように目を見開いていた彼女が笑みを浮かべて……
○○「ありがとう」
○○の手が、オレの手を包み込む。
その柔らかな温かさを噛みしめた後、オレは……
(このタイミングで言っていいのかわからないけど……)
(もしかしたら、拒否されちまうかもしれないけど……)
内心ビクビクしながらも、オレは○○の手を強く握り返す。
そして、最大級の勇気を振り絞り……
レオニー「アンタのこと、大好きだ。 人として……ってだけじゃない。 一生、一緒にいたいっていう感じの好き……だっ!」
微妙に締まらない告白に、我ながら呆れてしまう。
だけど……
○○「……うん。私も」
そんな、まだまだ頼りないオレの腕の中に、○○は笑顔で飛び込んできてくれたのだった…―。
おわり。