薄暗い城の回廊は、どこか物悲しい雰囲気を漂わせていた…―。
その中で、姿を消したレオニーをようやく見つけて、私は彼に駆け寄った。
○○「レオニー、大丈夫……?いきなりいなくなるから心配したんだよ」
けれどレオニーはすっかり萎縮してしまったのか、何かをぶつぶつと繰り返すばかりで、その場で小さくなっている。
レオニー「……勇気さえ……うぅ……勇気さえあれば……」
○○「レオニー……」
レオニー「……」
○○「ねえ、レオニー!」
レオニー「……え?」
大きな声で名を呼んで肩を叩けば、彼はようやく顔を上げた。
その顔は、何かに怯える小動物のように恐怖に歪んでいる。
レオニー「な、なんだよ……臆病者だって、オレを笑いに来たのか?」
○○「違うよ、でも……今のままじゃ、レオニーは勇気があっても変われないんじゃ……」
レオニー「な、なんでだよ!そんなわけない、失くした勇気さえ取り戻せば、オレだって……!」
悔しそうに唇を噛み、レオニーが目を細める。
レオニー「それとも、オレには勇気を取り戻すのは無理だって言いたいのか?」
○○「そうじゃなくて……勇気は人からもらうものじゃないと思うから」
レオニー「……でも、オズワルドは…―」
戸惑うような声を出し、彼はまた身体を小さくする。
○○「うん……昔、あなたが何をもらったのかは、わからないけれど……」
(どうしたら、レオニーに伝わるんだろう?)
胸元を押さえて、形にならない思いから慎重に言葉を選ぶ。
○○「確かにレオニーは何かをもらったのかもしれないけど、でも、勇気っていうのは…―」
その時だった。
レオニー「!?」
レオニーは何かを察知して、鋭い目を中庭の方に向けた。
○○「どうしたの……?」
レオニー「何か……いる!」
○○「え!?またさっきの…―」
恐怖に足が竦み、後ずさりする。
しかし背中にあるのは、冷たい大理石の壁で、今度こそ逃げ場はない。
(どうしよう……!)
おろおろとその場を見渡す。
レオニーは、ただ恐怖に足を震わせながら、庭に続く暗がりを見ている。
その時…―。
人形兵「……っ!!」
先ほどの人形兵が列を成して、奇妙な動きで庭から顔を出した。
壊れた機械のように不気味な音を響かせて、私たちに近づいてくる。
その中の一体の手が、暗がりの中で大きく振り上げられる。
○○「……!レオニー逃げて!」
レオニー「○○っ!?」
私達の叫び声が、夜の城に高く響いたのだった…―。