第4話 失くした勇気

城下町を抜けて、城に着く頃には、すでに夜が始まろうとしていた。

しかしかろうじて空にはまだ太陽の名残りがある。

レオニー「だ、大丈夫だよな!? 何もいないよな?」

〇〇「う、うん……」

先ほどからレオニーは、ずっと私の傍を離れようとしない。

私の手を両手で力強く握っている……

(それにしても不気味な城……誰もいないのかな?)

(今日は一晩、レオニーとここで過ごすことになるのかな……)

胸の奥が騒ぐ……

肩をすくませるレオニーの横顔を、そっと横から見上げた。

レオニー「……うぅ……勇気さえ失くさなければ……こんなの、どうってことないのに……」

誰にも伝えるでもなく彼の口から漏れたつぶやきに……

〇〇「今のってどういう意味?」

―――――

レオニー『……くそう……勇気さえあれば……』

―――――

(そういえば、街の人達に囲まれていた時も言っていたような……)

レオニー「…………」

〇〇「レオニー、教えて?」

押し黙ってしまったレオニーに、もう一度問いかける。

レオニーは数秒ほど、下を向いていたかと思うと、やがて口を開き始めた。

レオニー「この虹の国を治めるオズワルドって知ってるか?」

〇〇「オズワルド……さん?」

曖昧な返事をすると、彼はそのまま話を続ける。

レオニー「オレは、オズワルドに昔もらった勇気を、失くしたんだ……そのせいでこんな腑抜けになって。 だからもう一度、勇気さえ見つければ、オレは、またなんだってできるようになるはずなんだ……!」

いつも自信のなさそうな声がその時ばかりは大きくなる。

〇〇「勇気を失くしたって、どうして?」

レオニー「きっと……ユメクイに食われた拍子に、どっかに落とした、とか?」

いまいちはっきりしない彼の答えに……

〇〇「勇気って落とせるものじゃないと思うけど……」

レオニー「そんなはずない……! だってもらえるものなら、落とすことだってあるだろ!? だからオレは、もう一回、オズワルドに会って、勇気をもらうんだ! それさえあれば、オレはなんだってできるはずなんだ……! 昔、この領の皆が、オレのことを認めてくれたみたいに、きっと…-」

ぐっと何かに耐えるように、レオニーは拳を作る。

レオニー「そう、勇気があれば、なんでもできるんだっ! そうだろ!?」

〇〇「……」

まるで誰かにすがるような瞳で、レオニーが私に問いかける。

(うまく言えないけど、間違っている気がする……)

レオニー「……違う、のか?」

〇〇「レオニー、それは…-」

レオニーがあまりに寂しそうな顔をするので、口を開いたその時だった。

不快な音が廊下に響くーー。

レオニー「ひいっ!?」

〇〇「……!」

レオニーが私の腰に飛びつく。

〇〇「今の音は!? 待ってて、今、様子を見てくる」

レオニー「ま……待て! オレを一人にすんじゃねえーっ!!」

背中に追いすがる声をそのままに、私は音がした方へ走り出す。

逢魔が時の城に、足音だけが高く響くのだった…-。

 

 

<<第3話||第5話>>