月最終話 ヒヨコの合唱

レオニー「うわぁぁあっ!?」

レオニーの悲鳴と共に、卵から出てきたものは…-。

小さな男の子「わぁ! ヒヨコがいっぱいだー!」

髪の長い女の子「きゃははははっ、かわいい~!」

見る間に広場が卵から孵化したヒヨコ達でいっぱいになる。

レオニー「はっ!? なんで!?」

街の代表「まさか卵が孵化するなんて……! すみません、レオニー様!」

レオニー「いや、いったいなんなんだこれ!?」

街の代表「オズワルド様に頼んで、譲ってもらった卵なんですが……」

レオニー「オズワルドに!?」

生まれたてのヒヨコで溢れかえった広場にかわいいヒヨコの大合唱が響く。

ヒヨコ「ぴーっ!」

レオニー「あっ、待てって! 今お前まで飛び出したら……」

自分と同じ鳴き声に反応したのか、レオニーの懐からずっと一緒にいたヒヨコまでもが飛び出した。

ヒヨコ「ぴぴぴぃ! ぴーっ!」

しかも生まれ立てのヒヨコ達は、自分達の先輩でもある最初の一匹の声を聞いて、レオニーを囲んでいっせいに鳴き出したのだ。

〇〇「もしかしてこれって……」

レオニー「まさかだけど……コイツら皆オレのことを母親だと思ってる!?」

レオニーの声に反応するようにさらにさえずりが大きくなる。

(ど、どうしよう……)

私がその場の状況にすっかりあっけにとられていると、レオニーはヒヨコ達の前で腕を組んで大きく息を吸い込んだ。

レオニー「よし、わかった! こうなったらオレがコイツら全員面倒見てやる!」

〇〇「っ……!!」

彼の言葉にびっくりしていると、その瞬間レオニーに腕を引かれた。

目の前にレオニーの顔が近づいて……

スチル(ネタバレ注意)

その肩や手の上では生まれたばかりのヒヨコ達が元気よく鳴いていた。

〇〇「レオニー……」

まばたきを繰り返せば、ふっとレオニーの唇が困ったように微笑む。

レオニー「だって仕方ないだろ? それにコイツも兄弟ができて嬉しそうだし」

ヒヨコ「ぴぴぃ! ぴぴぴぃ!」

いつもより3割増しに高い声で鳴いて生まれたての子達より一回り大きく羽をバタつかせる。

レオニー「それにさ……」

〇〇「え……っ」

そっとレオニーは私の耳元に手をかざすと恥ずかしそうに口にした。

レオニー「アンタと二人で育てるのもいいかもしれないって思ったから。 ……な、〇〇?」

〇〇「うん……!」

少しはにかんで囁かれた台詞は、今までになく甘く私の耳に残った。

レオニー「オレ……自分のこと駄目なヤツだってずっと思って、自信がなかったけど。 アンタがずっと手伝ってくれて、こうして皆を楽しませることができて……」

ぐっとレオニーが確かめるように拳を握りしめる。

レオニー「アンタがいると……オレ、なんだってできる気がする……勇気が湧いてくる気がするんだ」

〇〇「レオニー……」

はにかむように笑うレオニーには、けれどどこか頼もしさが感じられて……

レオニー「……どう? 駄目かな?」

〇〇「駄目じゃないけど……こんなにいっぱいいたらきっと大変だね」

レオニー「でも賑やかで楽しいだろ?」

〇〇「うん……」

軽く頷くと、先に生まれたあのヒヨコがレオニーの肩から私の肩に飛び乗った。

ヒヨコ「ぴぴっ!」

〇〇「……っ!」

(びっくりした……)

レオニー「あははっ、コイツもアンタがいいみたいだ」

〇〇「じゃあ……この子と一緒に皆が大きくなるまで育てようか」

レオニー「うん、それまでちょっと〇〇にはオレの傍にいて欲しいかな。 コイツらとアンタは、何があってもオレが守ってみせるから」

〇〇「!」

まっすぐに告げられた言葉に、胸がどきりと音を立てた。

レオニー「約束しても……いいか?」

〇〇「……うん、もちろん」

レオニー「じゃあ……指切り」

差し出されたレオニーの指に、私も小指を絡ませる。

(……温かい)

指に感じるほのかな熱から、彼の優しさと強さが伝わってくる。

楽しそうなヒヨコ達の声が、青い空いっぱいに響き渡った…-。

 

 

おわり。

 

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