そして翌日…-。
人々が楽しみに待っていた感謝祭がついにやって来た。
私は宿代わりにしていたシンヴァ領の城でレオニーの部屋を訪ねていた。
〇〇「レオニー、私達も一緒にお祭りの街を見に行ってみない?」
レオニー「祭りに?」
彼はすっかり仲よしになったヒヨコを肩に乗せて私を部屋に招き入れた。
〇〇「うん、もちろんその子も一緒に」
ヒヨコ「ぴぴぃ?」
レオニー「でも……」
レオニーは両手を前で組み、ためらっている様子で……
(あ……昨日のこと気にしてるのかな)
―――――
レオニー『その……何か、言われたんじゃないかって……例えば苦情とか』
―――――
〇〇「ね、レオニー! 行こう?」
(街で皆がレオニーを待ってるから)
レオニー「お、おい……!」
ヒヨコ「ぴぴっ!」
レオニーの手を無理矢理引いて、私達は感謝祭へと向かった…-。
街に出てみると、感謝祭に訪れた人々で大きく賑わっていた。
レオニー「へえ……皆すごく楽しんでくれてるみたいだな」
レオニーと最初に行ったのは、街の人々に色とりどりの卵を手渡すための広場だった。
女の子「わぁ、お母さん! この卵、中から鳥さんがでてきたよぉ!」
女の子の母親「まあ、よかったわねぇ」
卵を受け取った人々は機械仕掛けに驚きながらも、誰もが笑顔を見せている。
レオニー「やっぱりさすがオズワルドだな。卵にあんな仕掛けがあったなんて……」
レオニーが人々のもらった卵を見て感心していた時だった。
街の代表「皆! レオニー様が来てくださったぞ!」
街の女性「まあ、あの姫様が本当に連れて来てくださったんだわ!」
レオニー「え!? なんで街の皆がオレを待ってんだ……?」
すぐにレオニーの周りに人々が集まり始めて人だかりができる。
小さな男の子「はい、レオニー様にも卵!」
レオニー「オレに!? オマエは確か、前に広場で手伝ってくれた……」
小さな男の子「うん! 街の皆でこのお姉ちゃんに相談して、皆でレオニー様にも贈ろうって決めたの」
髪の長い女の子「はい、あたしのも受け取ってー!」
街の人々はそれぞれ一つずつレオニーのために作った卵を手渡していく。
レオニー「皆……オレはオズワルドに頼まれて手伝ってただけなのに……。 〇〇、これって……」
〇〇「うん、昨日街の皆にレオニーへの日頃の感謝を伝えたいって相談されたの」
レオニー「そうだったのか……。 ありがとう、〇〇……皆……!」
レオニーは両手いっぱいになるまで街の人々から卵を受け取って、感極まって目が潤んでいる。
けれど不意に受け取った卵を見てレオニーが首を傾げた。
レオニー「けど、どこにこんな余分な卵があったんだ? オレがオズワルドからもらった卵は、街の人達の分しかなかったはずだけど……」
ヒヨコ「ぴぴぃ?」
疑問に思うレオニーの懐から例のヒヨコも顔を出す。
その時だった。
レオニー「あれ!? 今卵から音が聞こえてきたような……」
どこかで見たことのある展開に私はもしやと彼の手元を見ると……
〇〇「あっ! 大変、レオニーのもらった卵から……」
レオニー「うわぁぁあっ!?」
なんと街の人々からもらった卵が次々にひび割れて、ヒヨコが孵化し始めたのだった…-。