〇〇とヒヨコが野犬に襲われるのを助けた後…-。
ひとまず一度、城へ戻ることにした。
レオニー「〇〇、本当に大丈夫か? 本当の本当に怪我とかしてないか?」
〇〇「うん。そんなに心配しなくて大丈夫だよ、本当に平気だから」
ヒヨコ「ぴぴー……っ!」
ヒヨコもオレの胸の中で応えるように小さく鳴く。
(心配するなって言われても……)
これまで一緒に感謝祭に向けて頑張って来ただけに、どうしても気になってしまう。
レオニー「……なんかゴメン……オレがあの時、アンタから離れなきゃよかったのに……」
(そしたらあんな怖い思い、させなくてすんだのに……!)
自分が小心者だからこそ、恐怖に襲われた時の気持ちはよくわかる。
胸がぎゅっと痛くなって、隣を歩いていた〇〇の手を握った。
〇〇「……レオニー……」
レオニー「ん?」
その時、優しく名前を呼ばれてオレは俯きかけていた顔を上げた。
〇〇が穏やかに微笑んでオレの手を握り返してくれる。
〇〇「……襲われた時は怖かったけど……。 でもレオニーが勇気を出してる格好いいところが見れたから……」
レオニー「! オレ……ちゃんと勇気出てたのか!? 格好よかったのか!?」
心の奥が震えるような不思議な感覚が胸に湧き上がってきて、〇〇の手をもっと強く握りしめた。
〇〇「うん……。 あの姿を見たら、もう誰もレオニーのこと、怖がりだなんて思わないよ」
レオニー「〇〇~~っ!」
〇〇「えっ、レオニー!? ま、待って!ヒヨコが潰れちゃう!」
思わず込み上げて来る感情のままに〇〇を抱きしめてしまって、慌てて胸元のヒヨコを心配して力を緩めたのだった…-。
その後…-。
城の部屋に戻って来た時だった。
〇〇「!? レオニー!」
レオニー「あ……れ? オレ、どうしたんだ……!?」
いきなり足元から力が抜けて、オレはその場に座り込んでしまっていた。
立ち上がろうとして足が震えていることに気づいた。
〇〇「大丈夫? 具合でも悪いの?」
心配した〇〇が顔を覗き込んでくる。
レオニー「いや、これ多分違う。うわ……やっぱりオレ怖がりなままかも……。 情けないけど、今さらになって腰が抜けたみたいだ……」
〇〇「えっ、そうなの!?」
驚きに声を上げる〇〇に合わせて、胸元でヒヨコも鳴く。
〇〇「そこまで行くのに肩を貸すね」
〇〇はオレの肩に手を添えてベッドへと運んでくれた。
白いシーツの上に腰をかけるなり、全身から緊張が抜けてオレはその場に背を倒す。
(せっかく格好いいところ見せれたのにな……)
やっぱり弱い自分を見られて、悔しさに歯噛みする。
するとその時、ヒヨコが胸元からこぼれるように転がり出てきた。
ヒヨコ「ぴぴぃ……ぴ……ぃ……」
レオニー「ん?」
ヒヨコはよちよち歩きでオレの頭の近くまでくると、その場で小さく丸くなってしまう。
〇〇「……この子、寝ちゃったみたい……」
レオニー「そう……みたいだな?」
小さな寝息を立てるヒヨコを見て、オレと〇〇は小さく笑う。
そしてそのすぐ後……
〇〇「ん……っ」
〇〇がオレの横で腕を前に伸ばして欠伸をした。
レオニー「〇〇、眠いのか?」
〇〇「……うん……多分レオニーと一緒で緊張が抜けたんだと思う……」
レオニー「そうか、ならココ横になれよ。オレも慣れないことして疲れたし、ちょっと昼寝しようか?」
〇〇「でもいいの? 感謝祭は見に行かなくて……」
窓の外に遠く見える街並みを見て〇〇が眉を寄せる。
レオニー「いいだろ、どうせ祭りはまだ終わらないし、後から行けば。 それより……」
〇〇「……!」
オレが手を引くと、〇〇の体が隣に倒れ込んできた。
〇〇「レオニー!?」
レオニー「ふあ……なんかオレも眠くなってきたよ……〇〇」
目をこすって、シーツの上に乱れた〇〇の髪を手に取る。
レオニー「アンタの髪、柔らかくてふわふわだ……コイツとどっちが柔らかいかな?」
二人の間で寝息を立てるヒヨコを見て、また小さく笑う。
(でも……もう本当に眠い……な……)
穏やかな午後の陽射し照らされながら欠伸をする。
すると、〇〇もオレの頭に手を伸ばしてくれた。
〇〇「おやすみ……レオニー……勇気のあるレオニーも、今のレオニーもーー」
その言葉の続きを聞くことなく睡魔が襲ってくる。
レオニー「ごめん……聞こえない……でもオレもきっと……同じ気持ち……」
半分夢の世界に誘われながら、細い体を抱き寄せる。
〇〇は、暖かい陽射しのようにオレの好きな匂いがした…-。
おわり。