翌朝、待ち合わせ先の広場の上には真っ青な空が広がっていた。
(レオニー、もう来てるかな?)
私は宿泊先の城の厨房からもらってきた袋を持って彼を探すと……
レオニー「アンタ、思ったより早いな!」
○○「あ、レオニー!おはよう」
駆け寄った彼の手の中では、昨日のヒヨコが元気よく鳴いている。
○○「やっぱりレオニーによく懐いてるね」
ヒヨコ「ぴよっ!」
微笑ましさに口元を緩めると、ヒヨコはレオニーの手をくちばしでつつく。
レオニー「朝起きてからも、すっとこの調子なんだ。何を要求されてるのかオレ全然わかんないんだけど…」
○○「あ、そうだ。これお城の厨房の人に相談してもらってきたの」
レオニー「……玄米?あ、そっか!飯が欲しかったんだ! アンタさすがだな……オレなんで気づかなかったんだ?」
不思議そうにレオニーは首を傾げる。
その後、レオニーと一緒にヒヨコを地面に降ろして近くに餌を撒いた。
○○「食べてくれるかな?」
レオニー「……くれるかな?」
じっと様子を見ていると……
ヒヨコは撒かれた玄米を嬉しそうに啄み始めたのだった。
それから数日の間…―。
ヒヨコの面倒を見ながら卵の彩色を進める毎日が過ぎ去っていった。
そしてついに明日を感謝祭に控えたある日…―。
レオニー「終わったーっ!!」
昼になり、ようやく大量の卵の色塗りを作り終えたレオニーが天に腕を伸ばした。
○○「お疲れ様、レオニー」
ヒヨコ「ぴー!ぴぴぴー!」
レオニーの姿を見て、ヒヨコも嬉しそうに彼の足元を飛び跳ねる。
○○「仲良しだね。いつの間にかちゃんと歩けるようにもなったし」
レオニー「当然だっ!なんていったってオレがコイツの親だからな!」
(最初は戸惑ってばかりだったけど……すっかりお母さんになっちゃった)
彼に気づかれないように、くすりと笑みをこぼすけれど……
レオニー「世間の荒波に揉まれて傷つかないように時には心を鬼にして…-。」
胸を張るレオニーをよそに、ヒヨコは馬車の通る街道へと歩き出す。
レオニー「わああぁぁぁ!ストップ、ストーップ!!」
慌てて追い駆けたレオニーが地面からヒヨコをすくい上げて懐に入れる。
レオニー「はぁ……まだまだ目は離せないっていうか……」
彼はじっと懐にしまい込んだヒヨコを見てため息を吐く。
レオニー「オレ……コイツのことちゃんと大人になるまで看てやれるのかな……」
○○「レオニー……」
ヒヨコを見るレオニーの目は不安そうで……
○○「頑張ろう?きっと大丈夫」
レオニー「○○……そうだよな、コイツの命がかかってるんだもんな。 ありがとうな!」
○○「それじゃあ卵の準備はできたし、お祭りの飾りつけしようか?」
レオニー「そうだな」
私達は仕上がった色とりどりの卵を街のいたるところに運ぶ。
レオニー「……あ、オレが持つ!アンタに重い物持たせられない」
勢いよく、レオニーが私の持っていた籠を取り上げる。
レオニー「あ……ごめん、びっくりさせちまったか!?」
○○「ううん、ありがとう。やっぱりレオニーは優しいね」
レオニー「……!」
なぜか真っ赤になったレオニーの胸元で彼をからかうようにヒヨコが鳴いたのだった。