翌日…ー。
(少しも雨がやみそうにない……)
空は、どんよりと厚い雨雲に覆われていた。
(準備もあるし、早くやんで欲しいのに……)
けれど、天候はいっこうに回復する気配を見せなかった…一。
そんなある日のこと…ー。
◯◯「オズワルドさん、どこに行くんですか?」
工具や機材を抱えたオズワルドさんが、急ぎ足でどこかへ向かおうとしていた。
オズワルド「ちょっと街にね」
◯◯「え……でも、こんなに雨が降っているのに」
オズワルド「だからだよ。これはもう、どうにかしなきゃならないでしょう。 空を占拠しちゃった雨雲達に退散していただかないとねぇ」
オズワルドさんは軽く肩をすくめると、また足早に歩き始める。
◯◯「あ、待ってください。私もついて行っていいですか?」
オズワルド「雨に濡れちゃうよ?」
◯◯「それはオズワルドさんだって……」
オズワルド「まぁね。でも僕は男だから君よりは体も丈夫だろうし。 この国の王子としてやるべきこと……いや違うな。僕がやりたいことのためには、やらなければね」
◯◯「じゃあせめて私が傘を……」
オズワルド「うん、それは必要ないかな」
言うや否や、手に持っていたものの中から、棒状のものを取り出した。
かと思えば、すっと空中にその棒を放り投げて…ー。
◯◯「っ…… ! ?」
次の瞬間には、ばさりと開いたこうもり傘が、ばたばたと自動で空中に浮かんでいた。
◯◯「かわいい…… !」
オズワルド「気に入ってくれたようで何より。さ、では一緒に向かおうじゃないか」
◯◯「……っ!」
肩を抱き寄せられ、こうもり傘の下に二人で入り込む。
オズワルド「そんなに大きくないからね、しっかり僕にくっついてて」
◯◯「え……」
オズワルド「ああ、まだ城の中だったね! いけないいけない」
いたずらっぽい声を出しながらも、オズワルドさんは私から手を離そうとはしない。
キーと、どこか恨めしそうに鳴くこうもり傘と一緒に、私達は街へ向かった…ー。
…
……
街の中心部へ向かうと、オズワルドさんはすぐに、持ってきた道具を広げ始めた。
オズワルド「先に飛ばしていた探知機は……っと」
私にはわからない、複雑そうな機械を置いて、オズワルドさんは慣れた手つきでそれをいじり始める。
(何をしてるんだろう?)
オズワルド「うん、問題なし。そろそろ、必要なものも届く頃かな」
◯◯「……オズワルドさん、いったいどうやって晴れにするんですか?」
オズワルド「雨雲を追い払う技術を試していてね。 今は、探知機を上空高くに飛ばして、雨雲の種類と大きさを計測中だ」
(雨雲を追い払う技術って……すごい!)
オズワルド「ま、見ててよ」
どこかわくわくした表情で、オズワルドさんは薄暗い空を見上げるのだった…ー。