大広間に並ぶ個性的な山車に、胸を弾ませていると…―。
オズワルド「ああ、そうそう。せっかくだから、君の意見も教えてもらおうかな」
オズワルドさんが、ふと思い立ったように声を上げた。
○○「私の意見ですか?」
オズワルド「そう、君の意見……感想でもいいよ。僕を始めおっさんが集まって作ってるからね。このままじゃ、おっさんくさい山車になっちゃう。それは危険だ!」
○○「え……私でいいんですか?」
オズワルド「他でもない、君がいいんだよ。じゃあもう一度、メインの山車に戻るよ
○○「っ……!」
またぐっと抱き寄せられたかと思えば、二人で乗っているボードがぐんと加速する。
(わっ……!)
オズワルド「はーい、しっかり掴まって。もっと加速するよー!」
○○「……っ!」
思わずぎゅっとオズワルドさんの腕に掴まってしまった私のことを、彼が満足そうに見下ろしていた…―。
…
……
あっという間に、一番最初の……私が乗るという山車まで戻って来た。
オズワルド「このメインになる山車はまだまだ工夫したいところだったしね。何せ君が乗るんだ。君の意見は重要じゃないかい?」
これ以上ないくらい、オズワルドさんが私に顔を近づけ覗き込んでくる。
(近い……!)
○○「は、はい……」
またしても高鳴る胸の高鳴りを誤魔化すように、山車へと視線を向けた。
○○「私は……さっき、上に乗せてもらった時に高さ以外にも驚いたことがあって」
オズワルド「んっ?」
○○「とっても素敵なソファが置いてありましたよね? かわいいなって思いました」
オズワルド「それはよかった! ○○ちゃんが座る席だよ。パレードはさ、ふわふわのソファ、それに腰かけて優雅に手を振るお姫様……ってのは定番だからね」
○○「そうなんですか?」
オズワルド「そりゃそうさ! お姫様が手を振らないパレードを見て、だれが楽しいの! じゃあ他には?」
オズワルドさんが、私からすっと顔を離して山車を見上げる。
(あ……)
そのまっすぐな視線に、いいものを作りたいというオズワルドさんの思いが込められているようで……
(何か、言わないと)
山車をじっと見つめながら、私は考えを巡らせた。
○○「……今のままでも素敵だと思いますけど、もう少しだけ山車全体が華やかな雰囲気でもいいかなと」
オズワルド「ほう! 具体的には?」
○○「えーと……そうですね、カラフルになるとよさそうです」
その時、オズワルドさんんの帽子の中の電球がチカチカと点灯を始めた。
オズワルド「ふむふむふむ……」
大仰な手ぶりで、オズワルドさんが顎に手をあてる。
オズワルド「ふむ。じゃあ、君も塗装に参加してみるかい?」
○○「えっ……!?」
オズワルド「まだまだ、本番まで余裕がある。君の気が向いたらいつでもどうぞ」
○○「いいんですか?」
オズワルド「いいも悪いも、君次第!」
(……いいってことだよね)
どんな塗装をしたらいいか、山車を見つめ考えていると……
○○「あれ……オズワルドさん、この筒はなんですか?」
山車の下の方にある、小さな筒が目に入った。
オズワルド「ああ、それは……」
そのことを聞かれるのを待っていたかのように、オズワルドさんの笑みが深くなったのだった…―。